以前ロンドンの自然博物館に行ったとき、恐竜は消化管で食べ物を発酵させて熱を発生するという展示を見たことがあるが、熱の発生源はともかく、かってのは虫類には自分で熱を生成して体温を維持する恒温動物( endothermy と呼ぶ)が存在したと推定されている。これは、現存の変温動物と比べたとき、骨の成長速度や、アイソトープを用いた測定法で、代謝率の測定が可能になったためで、ティラノザウルスも恒温動物に分類されている。
今日紹介するイエール大学からの論文は、ミトコンドリアの代謝活性と比例する advanced lipoxygenation endo-products (ALE) をラマン分光計で計測することで、化石であっても生存時の代謝状態を推定でき、恒温動物か変温動物かを判定できることをしました研究で、5月25日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Fossil biomolecules reveal an avian metabolism in the ancestral dinosaur(化石の生体分子により鳥の代謝が古代の恐竜に存在していたことがわかる)」だ。
元々、ALE はミトコンドリアの代謝が高まることで生まれる活性酸素によりタンパク質の lipoxygenation により形成され、臨床的にも利用されているが、このうち骨を形成するコラーゲンなどの細胞外マトリックスは、ALE として何億年も安定に維持されるらしい。このうち、化石生成過程で変化した ALE と元の ALE の比を計算すると、その動物の代謝程度が推定できる。
実際、現存の動物で調べると、ALE から計算される代謝率は、鳥類や哺乳動物では高値を示すが、変温動物では身体のサイズの関わらず低値でとどまる。この方法を様々な年代の骨に応用し、
- ALE をラマン分析する方法で、化石でも代謝率を推定することが可能で、得られる代謝率は身体の大きさと比例する。
- 続生(化石生成過程の変化)過程を受けない ALE の量から、代謝の高かった動物と、比較的低かった動物に分けることが出来る。
- この方法で、現在知られている鳥類や哺乳類の系統樹に、恒温性を当てはめると、両者は別々に独立して発生し、鳥類の祖先では2億5千万年前の恐竜に現れているが、哺乳動物では1億8千年前の哺乳動物発生とともに恒温性が発生している。
- これ以外でも、オオトカゲの進化のように、全く新しく変温動物が恒温動物に変化した例も存在することから、恒温性は進化の過程で独立して何度も現れていると考えられる。
以上が結果で、こんなことが出来るのかと驚くとともに、一つ物知りになったと楽しんで読んだ。
ALEをラマン分析する方法で、化石でも代謝率を推定することが可能で、得られる代謝率は身体の大きさと比例する。
Imp:
なんと!!化石からでも代謝率の推定が可能だとは。。。