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7月20日 腎移植患者さんでもチェックポイント治療は可能(7月6日 The Lancet Oncology オンライン掲載論文)

2022年7月20日
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チェックポイント治療がガンの免役学的排除を目指すものなら、もともと免疫的排除を抑える必要がある臓器移植患者さんは、チェックポイント治療を受けられるかどうかは、臨床上重要な問題だ。この論文を読むまで、この問題を考えたことはなかったが、これまでの臨床例では予想通り高い確率で、チェックポイント治療開始早期に臓器の拒絶が起こることが報告されていたようだ。

今日紹介するニュージーランド・Central Northen Adelaide Renal and Transplantation Serviceからの論文は、腎移植を受けて免疫抑制剤を服用している患者さんがステージ4の腫瘍を併発した場合も、PD-1抗体によるチェックポイント治療を受けられる可能性を示した臨床治験で7月6日 The Lancet Oncology にオンライン掲載された。タイトルは「Immune checkpoint inhibitors in kidney transplant recipients: a multicentre, single-arm, phase 1 study(腎移植患者さんでの免疫チェックポイント阻害治療:単群1相試験)」だ。

最終的に、チェックポイント治療効果が確認されているガンを併発した腎移植患者さん(平均69歳)をリクルートし、現在使用中の免疫抑制剤を利用したまま、通常量の PD-1 抗体治療を行って、移植腎の状態と、ガンへの治療効果を見た治験になる。

まずガンに対する治療効果だが、免疫抑制剤をそのまま使用しているにもかかわらず、24%で完全寛解が認められ、29%で部分寛解が認められている。このグループの現在までの平均生存期間は28週で、一般のガン患者さんでのデータとほとんど遜色はない。

チェックポイント治療中に起こる自己免疫症状をステロイドなどの免疫抑制剤で治療することがあるので、免疫抑制剤が必ずしもチェックポイント治療の障害になるわけではないことはわかっているが、移植で利用される多剤併用の免疫抑制でも PD-1 抗体が使えることは重要な情報だ。また、免疫学的にも今後詳しい解析が必要な面白い課題だと思う。

次に、チェックポイント治療により移植臓器拒絶が誘発されるかだが、結局2例の患者さんでしか起こらなかったことには驚く。そのうち1例は、抗体を除去する目的の血漿交換により拒絶を抑えることが出来ている。

ただ、チェックポイント治療のガンに対する効果と、拒絶反応は全く無関係ではなく、拒絶が起こった2例は、ガンに対する治療効果が認められていたグループで有ることを考えると、免疫を非特異的に高めることの問題も示唆している。

結果は以上で、小さな不可能をそのままにせず、注意深くチャレンジしていく臨床研究の重要性を感じるとともに、医師達の努力に脱帽。ガンの治療に占める免疫治療の重要性を考えると、この研究をきっかけに、もっと大きな不可能にもチャレンジが進むと思う。不適合の MHC に対する反応と、ガン抗原+自己 MHC に対するT細胞のレパートリーは大きく異なる可能性があるので、今後はより特異性の高い免疫療法を目指せば、移植とガンの免疫治療は間違いなく両立できるはずだ。

  1. okazaki yoshihisa より:

     
    1:免疫抑制剤をそのまま使用しているにもかかわらず、24%で完全寛解が認められ、29%で部分寛解が認められている。
    2:このグループの現在までの平均生存期間は28週で、一般のガン患者さんでのデータとほとんど遜色はない。
    3:移植で利用される多剤併用の免疫抑制でもPD-1抗体が使えることは重要な情報だ。
    4:免疫学的にも今後詳しい解析が必要な面白い課題だと思う。
    Imp:
    臓器移植患者さんで、PD-1抗体薬が使えるのか?
    興味深い問題です。

    最近、『肝臓癌肝移植治療後+膵臓癌発症=患者さんへ、免疫細胞治療・PD-1抗体治療を行うかどうか?』という問題に直面しました。
    移植臓器=一種のガン組織と考え、移植臓器障害の可能性があるのでは?との結論で、免疫細胞治療・PD-1抗体治療は見合わせました。

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