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8月13日 ジャンクDNAを免疫抑制に上手に飼い慣らす(8月10日 Nature オンライン掲載論文)

2022年8月13日

私たちのゲノムの大きな部分がジャンクDNAと呼ばれる、機能が全くわからないDNAにより閉められているのは、読者の皆さんにもよく知られていると思う(LINEについてはJT生命誌研究館で書いていたブログを参照してほしいhttps://www.brh.co.jp/salon/shinka/2015/post_000011.php)。このジャンク DNA の中で、レトロウイルスによく似て、一部は転写もされる DNA の一つが LINE と呼ばれる7kb程度の、レトロトランスポゾンで、ヒトゲノムでは数千の LINE が特定されている。ほとんどの場合、LINE もジャンク DNA として片付けられているが、マウスでは多くの LINE が免疫関係の遺伝子に飛び込んでいることがわかっており、何らかの機能があるのでは考えられてきた。

今日紹介するオーストラリア・Garvan 医学研究所からの論文は、LPS やコクサッキーウイルス感染により発現が誘導され、しかも Schlafen と呼ばれる細胞周期を止め、コクサッキーウイルス感染に重要な働きをすることが知られている分子の上流に飛び込んだ LINE、Lx9 遺伝子をノックアウトし、その機能を調べた研究で8月10日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「The retroelement Lx9 puts a brake on the immune response to virus infection(Lx9レトロエレメントはウイルス感染で誘発される免疫反応にブレーキをかける)」だ。

LINE トランスポゾンの数は膨大なので、特異的ノックアウトは簡単ではないが、極めて保存されたスプライスサイトを選び出して、ノックアウトに成功している。この結果、Lx9 から転写される long noncoding RNA の発現は完全に消失している。

ノックアウトマウスは正常に発生し、さらに健康に成長する。しかし、Lx9 の転写を誘導するコクサッキーウイルスに感染させると、驚くなかれウイルスの増殖はコントロールと変化内にもかかわらず、膵炎のみならず、肺炎を併発し、多くのマウスが死んでしまう。即ち、ウイルス感染によって誘導された炎症のコントロールがきかなくなっていることがわかる。

このような免疫抑制の欠如の原因を調べる目的で、組織上の遺伝子発現などを調べた結果、Lx9 long noncoding RNA が Schlafen のみならず αインターフェロン受容体など、様々な免疫性の炎症に関わる分子に結合して、その翻訳を抑えていることがわかった。即ち、ノックアウトで long noncoding RNA が転写できないと、これら遺伝子の抑制が効かずに、炎症が増強してしまうことが明らかになった。

最後に、全ての形質が、long noncoding RNA の発現がなくなるためであることを証明するため、レトロウイルスで Lx9long noncoding RNA をマウスに投与すると、肺炎や膵炎が治まり、マウスも生存できることを示している。

以上が結果で、これまでレトロトランスポゾンは、ガン抗原として働いたり、遺伝病の原因になったりと、ネガティブな役割についての論文が多かったが、この研究は、私たちがジャンクDNA をうまく使って進化していることを示しており、面白い。


  1. okazaki yoshihisa より:

    Lx9 long noncoding RNAがSchlafenのみならずαインターフェロン受容体など、様々な免疫性の炎症に関わる分子に結合して、その翻訳を抑えている。
    Imp:
    lncRNAの機能も次第に明らかに!

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