現在多くの病気のリスクについて、遺伝的多型がリストされているが、コモンバリアントの場合リスクレベルは高くないため、個々の多型の病気発症への関わりを解明することは簡単でない。コーディング領域にアミノ酸変異があっても、コモンバリアントの場合、それがリスクにつながるメカニズムを特定することは難しいのに、ましてやコーディング領域外となるとさらに解析が困難になる。
今日紹介するペンシルバニア大学からの論文は、7番目の染色体にあるパーキンソン病(PD)のリスク遺伝子多型について、この困難な解析をやり遂げたお手本とも言える研究で、8月17日号の Science に掲載された。タイトルは「GPNMB confers risk for Parkinson’s disease through interaction with a-synuclein(GPNMBはパーキンソン病リスクを αシヌクレインとの相互作用を介して高める)」だ。
この研究では PDリスク遺伝子多型の一つ rs199347を取り上げ、まずどの遺伝子の発現がこの多型で変化するかを探索している。脳での発現、さらには異なる多型の染色体での遺伝子発現を別々に調べる方法(アレル特異的遺伝子発現検出法)などを駆使して、最終的に rs199347は膜タンパク質GPNMBの発現レベルに関わる可能性を突き止める。
次に、iPS細胞の遺伝子編集を用いて、GPNMBを片方、あるいは両方の染色体でノックアウトし、神経まで分化させた後、その影響を調べ、GPNMBが αシヌクレインと直接結合して、αシヌクレインの細胞内への取り込みに関わることを明らかにする。以上の結果から、rs199347多型が PDリスク型の場合、GPNMBの発現が上昇し、その結果細胞外の αシヌクレインを取り込む量が高まることを示している。
実際、GPNMB発現が低下した神経細胞にαシヌクレインを線維化させて加えても、シヌクレインの細胞内取り込みが低下しているために、細胞内毒性が起こらないことを明らかにしている。
最後に、実際の患者さんで、rs199347多型と、GPNMB発現レベル、病気の程度などを相関させ、実際のPD発症にrs199347多型がGPNMBの発現量を変化させているか調べているが、一応相関は見られるものの、レアバリアントで見られるほど強い相関は示さない。しかし、コモンバリアントについて、ここまで機能をしかもヒトの細胞で明らかにしたことは、高く評価していいと思う。
結果は以上で、GPNMBとαシヌクレインの結合を阻害する様な化合物が見つかれば、大ヒットになるかもしれない。
rs199347多型がPDリスク型の場合、GPNMBの発現が上昇し、その結果細胞外のαシヌクレインを取り込む量が高まることを示している。
Imp:
コモンバリアント変異の機能に果敢にチャレンジ。
コモンバリアントにも治療標的がある!