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9月10日:老化幹細胞を活性化する(Nature Medicineオンライン版掲載論文)

2014年9月10日
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血液や皮膚など多くの組織では、成熟した細胞が毎日失われている。これを補うため、幹細胞システムが必要だ。今幹細胞の老化の仕組みについての研究が盛んだ。今年4月15日に紹介したが、115歳の老人の造血はたった2個の幹細胞でまかなわれている事が報告されている。若い時には何百もあるはずで、老化とともに幹細胞が失われて行く事をはっきりと示している。これを防いで幹細胞を若返らせる事が出来ないか?これまで、様々なメカニズムが明らかになって来た。低酸素反応、DNA損傷に対する修復機構など、一種のストレス反応に対する機能は老化とともに確かに低下するようで、まあ仕方ないなと納得する論文が多い。しかし今日紹介するオタワ大学、Michael Rudnickiグループからの筋肉幹細胞に関する研究は、これまでとは少しおもむきが違っていた。同じ時に、アメリカのサンフォード・ブルハム研究所から同じ内容の論文が出ているが、ここではRudnicki達の論文を紹介する。タイトルは「Inhibition of Jak-Stat signaling stimulates adult satellite cell function(Jak-Statシグナル抑制により成人の筋衛星細胞の機能を活性化する)」だ。衛星細胞と言うのは、筋肉組織に存在する幹細胞で、失われた筋肉細胞をゆっくりとではあるが再生するために必須の細胞だ。他の幹細胞と同じで、衛星細胞も老化とともにその機能が低下する。幸い筋衛星細胞は他の細胞から区別して集める事が出来るので、老化によってどのような変化が起こっているのかが調べられた。その結果、通常炎症反応と考えられている回路、即ちJak-Stat回路が活性化している事を突き止めた。実際にこの回路の活性化が衛星細胞老化の原因かを調べるため、様々な方法でこの分子の機能を押さえると、試験管の中でも、身体の中でも確かに幹細胞の活性を元に戻す事が出来る。最後に、このシグナル経路を抑制する薬剤を筋肉に注射し、障害した筋肉の再性能を調べてみると、細胞数も筋力も大きく改善したと言う結果だ。この研究では、Jak-Stat回路を活性化している環境因子が何か?あるいはこの回路の活性化により誘導されるどの分子が幹細胞機能を抑制しているのか?については明確ではない。ただ、慢性炎症によりこの回路が活性化され、衛星細胞が増殖より分化の方向に進む事で老化が進むと想像する事が出来る。とすると、今度は炎症と言うストレスが、幹細胞の機能を損うストレスになっている事を示している。この研究にあるように、炎症に対する反応を抑制しても幹細胞は若返らせる事が出来るが、何よりも炎症が起こらないようすることで幹細胞を守る事が重要だろう。事実、血管の動脈硬化や糖尿病も一種の慢性炎症の結果ではないかと考えられている。しかしひょっとしたら、ストレスなしの生活を送るほど、ストレスの多い事はないかもしれない。人生は複雑だ。

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