老化が進む一つの原因が、老化した細胞が組織に長期間残ってしまうことで、新陳代謝を妨げ、慢性炎症状態が維持されるからだとする考えは広く受け入れられている。これを防ぐには、老化細胞を速やかに除去するsenolysisと呼ばれる過程を高めることが重要で、様々な方法が開発されてきたが、senolysisが生理的に行われているのかはよくわかっていない。
今日紹介するハーバード大学からの論文は、senolysisが人間の皮膚で起こっており、キラー活性を持つCD4T細胞が老化細胞が発現するサイトメガロウイルス抗原を見つけて除去しているという研究で、3月30日号の Cell に掲載された。タイトルは「Cytotoxic CD4 + T cells eliminate senescent cells by targeting cytomegalovirus antigen(細胞障害性CD4T細胞がサイトメガロウイルス抗原を標的にして老化細胞を除去する)」だ。
おそらく化粧品会社の最も重要なターゲットの一つは、皮膚の老化を遅らせることだと思う。この研究では、皮膚の中でも真皮に存在する線維芽細胞に焦点を当て、様々な年齢の皮膚バイオプシー標本から老化細胞の数を算定している。
結果はちょっと複雑で、若者と比べると確かに年齢とともに老化細胞の数は上昇するが、50歳を超すとほとんど年齢と比例しなくなる。おそらく単純に時間とともに起こる変化とは別の変化が、老化細胞の数に関わると考え、真皮に存在する血液細胞と老化細胞の相関を調べると、細胞障害性の機能分子を発現するCD4T細胞が多いほど老化細胞が少ないことに気づいている。
さらにCD4T細胞を分離した同じ人から、線維芽細胞を調製し、分裂抑制により老化させ、CD4T細胞と共培養すると、CD4T細胞は老化細胞のみを殺す活性があることを見いだしている。
次に、このCD4T細胞が老化細胞のどの抗原を認識しているのか探索し、老化した線維芽細胞ではクラスII-MHCとともに、サイトメガロウイルスグリコプロテインの発現が高まっていることを発見する。そして、CD4T細胞がウイルス抗原を発現している線維芽細胞を傷害する活性を持ち、抗原受容体もウイルスペプチドとクラスII-MHC複合体と結合していることを確認している。
結果は以上で、では本当にサイトメガロウイルス特異的CD4T細胞が皮膚の老化を防いでいるかどうかは、人間についての状況証拠だけでは結論できないだろう。おそらくシステムをマウスに完全に移して、皮膚の老化が防げるか、さらに他の臓器でも同じことが言えるかが結論できるのだと思う。
これで証明されると、あなたのCD4T細胞を活性化しますと言ったサービスも可能になるかも知れない。
senolysisが人間の皮膚で起こっており、キラー活性を持つCD4T細胞が老化細胞が発現するサイトメガロウイルス抗原を見つけて除去している。
Imp:
CD4T細胞を操作して人工的にsenolysisをおこす=皮膚若返りの人的操作が可能になるかも?