8月、MECP2重複症の患者家族の会の年会で、この様な希少難病の家族会がChatGPTやGPT4をChatBotとして活用できるか、いろいろ試そうということになり、私もことあるごとに病気について検索を繰り返している。そして、検索するたびに、人間が集めてきた膨大な言語空間に人間の活動や知識が想像を超えるレベルで集められていることを実感する。この様に検索すればするほど、使い方を工夫することで、患者さんや家族の専門知識への距離は大きく縮まるのではと感じている。
さてGPT-4で過敏性大腸炎の発症メカニズムについて聞いてみると、いくつかの要因とともに、
ストレスや心理的要因:ストレスや心理的要因はIBSの症状を悪化させることがあります。ストレスは腸の動きや感受性を変えることがあり、これが症状を引き起こす可能性があります。
という心理的ストレスが病気の要因になることを指摘してくる。今日紹介するペンシルバニア大学からの論文は、なぜ心理的ストレスが腸炎を悪化させるのか調べた研究で、5月25日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「The enteric nervous system relays psychological stress to intestinal inflammation(腸内神経系が心理的ストレスを腸の炎症へとリレーする)」だ。
タイトルを見て、なぜ今さらストレスと炎症と思ったが、読んでいくと、結局そのメカニズムはほとんどわかっていないことがわかった。
実際、マウスを強いストレスに晒して腸上皮を傷害すると、ストレスにより炎症の程度が強くなり、死亡率が上昇することがわかる。面白いことに、この炎症悪化にはリンパ球は関わっておらず、白血球が炎症悪化に関わっている。すなわち、脳でのストレス反応が最終的に腸内の白血球を刺激し炎症が悪化していることになる。そこで、脳から白血球までの経路を明らかにするため、まず腸の炎症を指標に、脳で発生したストレス反応が腸に伝わるメディエーターについて検討し、ストレスによるグルココルチコイド(GC)分泌が、腸の炎症を悪化させることを明らかにしている。
次に、GCにより刺激を受ける細胞を特定するため、神経細胞やグリア細胞からGC受容体をノックアウトする実験を行うと、グリア細胞がGCの刺激を白血球へとリレーしていることが明らかになった。これまであまり腸管内のグリア細胞について述べた論文を読んだことがなかったが、腸管でも神経とグリアがセットとなって働いていることがわかる。
最後に、刺激されたグリアから分泌され白血球を活性化する分子を探索し、最終的にCSF1(マクロファージ刺激因子)が白血球を刺激し、TNF分泌など炎症性のサイトカインを誘導することを明らかにしている。
また、過敏性大腸炎の要因としてGPT-4が
腸の動きの異常:IBS患者さんでは、腸の動きが通常とは異なることが確認されています。便秘型のIBSでは腸の動きが遅く、下痢型のIBSでは速くなっています。
と指摘する様に、蠕動異常自体が炎症を悪化させる可能性も指摘されている。この研究では、ストレスにより分泌されるGCが腸内の神経にも働いて、TGFベータの分泌を誘導、この作用によりなんと分化した細胞を未分化細胞へとリプログラミングされ、その結果機能的神経細胞が低下、これが腸内の炎症の悪化を助けることを明らかにしている。
以上は全てマウスの結果だが、さまざまな人間のコホート研究を利用し、また大腸鏡でのバイオプシーなどを組み合わせて、ストレスが炎症を悪化させる時、マウスと同じ様に白血球の上昇、TNF分泌、さらにはTGFβ2上昇が見られることを確認している。
地道な研究だが、ストレスと炎症をつなぐ詳しい経路をよく理解することができた。
03
腸管でも神経とグリアがセットとなって働いている!
Imp:
グリア細胞がIBDに関与していたとは。。。
ChatGTP-4も一つ学習したようです。
興味深い論文をご紹介いただき、勉強になりました。
論文はIBDのメカニズムの一端を明らかにしたものですが、記事の中では炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)と過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)とを混同しているような印象を受けました。
おっしゃる通りで実験は硫酸デキストリン、コホートはIBDを使った研究で、モデルはIBDですが、ストレスの腸への影響を考えやすくするため、IBSでChatBotして脚色しています。大事な点は、グルココルチコイド、グリアによるcsf1、白血球による炎症性サイトカインの回路が腸内の炎症を悪化させることかと思いました