βサラセミアは、βヘモグロビン遺伝子の変異により貧血が起こる遺伝疾患だが、輸血が必要な重症型では、酸素を運ぶヘモグロビンの異常を超えて、骨髄外での造血による脾臓や肝臓の肥大、骨髄造血異常、そして病的骨折などの骨形成バランスの異常を伴う。しかし、なぜこれほど多様な症状が発生するのかについてはよくわかっていない。
今日紹介するイタリア・サンラファエロ科学研究所からの論文は、FGF受容体とKlothoが複合した受容体に結合して、リン酸のバランスを調節するFGF23に注目してβサラセミアを見直した研究で、5月31日号 Science Tanslational Medicine に掲載された。タイトルは「Inhibition of FGF23 is a therapeutic strategy to target hematopoietic stem cell niche defects in β-thalassemia(FGF23阻害はβサラセミアの造血幹細胞ニッチ欠損を標的にする治療戦略になる)」だ。
タイトルにあるように、このグループは骨の異常と造血の異常をつなぐ鍵がリン酸バランスを調節して骨の骨化を調節するFGF23にあると考え、まずβサラセミア患者さんのFGF23測定から始め、FGF23が上昇している患者さんが多いこと、そしてFGF23の血中濃度と、骨密度とヘモグロビン量が反比例することを明らかにする。すなわち、FGF23が上昇すると骨化異常による骨吸収が起こり、貧血が進む悪循環が起こることを示している。
患者さんではFGF23とエリスロポイエチン(EPO)が相関するので、マウスの骨細胞にEPOを添加するとFGF23が上昇することを発見する。またFGF23は骨細胞にEPO受容体が発現していること自体驚いたが、EPOが 骨化に関わるFGF23誘導に関わるという発見は、ヘモグロビン異常、EPO、FGF23、そして骨化異常、造血という連鎖を明らかにした。
そこで、FGF23は分解されcFGF23になるが、これはFGF23の阻害剤として働く。そこで、サラセミアのモデルマウスに、FGF23阻害分子を投与すると、骨化が正常化、さらに骨髄での造血幹細胞が回復する。すなわち、ニッチが回復して貧血を抑えることが出来る。さらに、赤血球産生で見ても、様々な文化段階での細胞死を抑えることが出来、その結果貧血を抑えることが出来ている。
以上が結果で、骨形成と造血がニッチ形成を通して密接に関係していること、赤血球産生についても正常な骨髄構造が必須であることが、FGF23の研究からよくわかった。
以上が結果で、骨髄という現場でEPOが骨に働いてFGF23を誘導することが、赤血球の作りすぎを抑えていることになるが、このおかげでEPOによる赤血球の作りすぎが抑えられ、安全に使えていることがわかる。一方、このようなメカニズムがない血小板増加因子は作りすぎという副作用のため、臨床では使えない。
また、FGF23は主に腎臓に働いてリンの排泄を調節しているが、EPOは腎臓で作られる。すなわち、腎臓で造血していた水中脊髄動物が陸上に上がって骨髄を造血に使うようになったとき、FGF23とEPOの関係が生まれた可能性もある。
臨床研究とは言え、様々な可能性が湧き上がる面白い研究で勉強になった。
骨の異常と造血の異常をつなぐ鍵がリン酸バランスを調節して骨の骨化を調節するFGF23にあると考えた。
imp,
骨、造血、腎臓
不思議な関係ですが、進化の痕跡が隠されている?