AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 1月8日 最古の光合成藍藻の化石(1月3日 Nature オンライン掲載論文)

1月8日 最古の光合成藍藻の化石(1月3日 Nature オンライン掲載論文)

2024年1月8日
SNSシェア

世界最古の化石についてご存知だろうか。まだ、生命誌研究館の顧問をしていた時代、「進化研究を覗く」と題して時々のトピックスを紹介していたが、2014年世界最古の化石がどの様に研究されているのかをまとめて紹介したことがある(https://www.brh.co.jp/salon/shinka/2014/post_000005.php)。これによると、35億年前の保存性が高い地層に存在する粘液細菌からなると考えられるストロマライトの中に認められる構造物こそが、細菌の化石とされている。もちろんなかなか証明が難しい分野なので異論も多い。しかし、多細胞生物が地球上に発生する6億年より前の生物は全て単細胞生物なので、この時期の化石研究は、当然単細胞の様な極小の構造を探すことになる。

今日紹介するベルギーリエージュ大学からの論文は、地球で光合成が始まり、酸素環境が形成されるきっかけになったシアノバクテリア、すなわち藍藻の発生時期を化石から調べ、おおよそ17億年以前には進化していたことを示した研究で、1月3日 Nature にオンライン掲載されている。タイトルは「Oldest thylakoids in fossil cells directly evidence oxygenic photosynthesis(化石の中に見られる最も古いティラコイドは酸素発生性光合成の直接的証拠になる)」だ。

光合成は植物に特徴的と思ってしまうが、他にもクロレラなどの藻類、そして藍藻の様な原核生物でも行われる。そして、この藍藻が葉緑体の起源となっており、ゲノムから見ると藍藻の進化は30億年前と推定されている。この結果、地球に初めて酸素が生まれ、その後酸素を利用する生物が進化してくることになるが、実際藍藻に似た細菌が古い地層に残っているのか、研究が続けられている。

しかし、細菌の化石を特定できるとしても、光合成を行っていたことをどう証明するのか。この研究では藍藻や葉緑素に存在する光合成のための膜に結合した小器官ティラコイドに着目した。そこで、オーストラリア、カナダ、そしてコンゴのシェール層から見つかっていた藍藻の仲間と考えられる化石を電子顕微鏡を用いて観察し、オーストラリア、カナダの化石の中に、明確にティラコイドと言える構造を発見する。

これが結果の全てで、あとはこれが化石形成過程のアーチファクトではないことを、例えばこの細菌が化石化された条件(Burial temperature)をラマン顕微鏡で調べると言った方法で確認している。すなわち、化石化が起こる過程の温度は180−200度程度で、十分に細胞内の構造が保存されることを示している。この様に、この分野で最も重要なのは、年代測定と、化石化課程の検証になるようだ。

結論としては、最も古い光合成を示す化石として17億年が示された。さらにコンゴから出土した藍藻類の化石にティラコイドが存在しなかったことは、12億年前には現在に見られるような光合成藍藻と、光合成を行わない藍藻が分離していたことも明らかになった。

これまでほとんど使われてこなかった電子顕微鏡を使える様にしたことが、細菌化石の解析が、最古の光合成細菌を特定に繋がったことになる。同じ方法を使って探せば、さらに古い藍藻化石が見つかることが期待できそうだ。地球規模で考えれば地学と生物学は近い。

  1. okazaki yoshihisa より:

    オーストラリア、カナダの化石の中に、明確にティラコイドと言える構造を発見する。
    imp.
    光合成。
    このような複雑な工程が、どのように自然発生したのか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*


The reCAPTCHA verification period has expired. Please reload the page.