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7月8日 持続するCovid-19へのT細胞反応を検出する(7月3日Science Translational Medicine掲載論文)

2024年7月8日
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Covid-19感染は現在も続いているようだが、我々の側にも十分抵抗力が形成され、大きな問題にはならなくなってきた。一方で、感染後続く Long Covid と呼ばれる後遺症が問題になり、様々な研究が発表されている。例えば Nature Medicine 6月号には、13万人の感染者について後遺症を追跡した疫学調査が発表され、死亡率や症状は3年経つと消えていくが、それでも1%近い人、特に入院を必要とした重症者で、症状とともに死亡リスクが存在することが示された。

そして、入院した重症者では様々な臓器の症状が3年後も残る一方で、比較的軽度の感染者では、3年後に見られる後遺症は、神経系、呼吸器系、そして消化管に限られていたことが示された。この結果からも、Long Covid では感染が持続している可能性が示唆される。

今日紹介するカリフォルニア大学サンフランシスコ校からの論文は、持続するコロナウイルスに対するT細胞の反応を人間でモニターできる PETリガンドを使って Long Covid を追跡した研究で、7月3日 Science Translational Medicine に掲載された。タイトルは「Tissue-based T cell activation and viral RNA persist for up to 2 years after SARS-CoV-2 infection( SARS-CoV2感染後組織レベルの T細胞の活性化とウイルスRNA は2年は持続する)」だ。

この研究で用いられたのは、白血病診断用に開発された活性化 T細胞特異的に追跡する PETリガンド18-F-AraG を、Long Covid での持続的T細胞反応追跡に使った研究だ。18-F-AraG は抗がん剤 AraG に18-Fを標識し、これを取り込んだ活性化T細胞の局在を調べる方法で、核酸ENT1トランスポーターを通って AraG が取り込まれると、活性化T細胞で発現が上昇している deoxycytidine kinase によりリン酸化され、サルベージ経路を通って核酸の中に取り込まれるため、この酵素を強く発現する活性化T細胞がある程度特異的に検出できる。最近では、チェックポイント治療での T細胞の反応検出などにも用いられている。

この研究のハイライトは、Long Covid を訴える患者さんで、感染後様々な時期にこの検査を始めて行ってみたということになる。基本的には抗ガン剤を標識に用いてはいるが、特に副作用は観察されず、診断に利用できることがわかった。

さて結果だが、コントロールと比べると、Long Covid を訴える人では、様々な部位で AraG の取り込みが観察される。特に取り込みが顕著な部分は、脳幹、胸部脊髄、尾部脊髄を中心とする神経系に、大動脈弓、肺動脈、心室、そして大腸や直腸で、これらの部位の取り込みが強いほど Long Covid 症状が強い。これらの部位は上に紹介した Nature Medicine 論文での症状部位と一致する。

しかし、患者さんの訴える臓器症状と、AraG の取り込み部位は、肺症状以外は一致が見られず、今後もう少し大規模な調査が必要と思われる。

重要なことは、免疫系の検査と組み合わせてみたとき、抗体反応にかかわらず Long Covid が発生する点で、2年以上たった症例でも、活性化された T細胞が各組織に存在していることは確認された。

AraG 取り込みと直接相関しそうなマーカーを探索した結果、様々な炎症マーカーとの相関が見られたことから、Long Covid では持続するウイルス感染に対して T細胞の反応が維持され、炎症につながっていることが示された。

最後にバイオプシー可能な腸管で、AraG の取り込みが診られた患者さんの全てでウイルスが検出できることを示している。

以上、大体これまで知られていることなので、この検査がどのぐらい有効かは評価しにくいが、しかしT細胞の反応が持続していることは明らかで、今後の問題になる。

  1. yoshihisa okazaki より:

    免疫系の検査と組み合わせてみたとき、
    1:抗体反応にかかわらずLong Covidが発生する
    2:2年以上たった症例でも、活性化されたT細胞が各組織に存在している。
    Imp:
    トレサー。
    技術の進歩で、今後、診断治療で大活躍しそうな予感を感じる論文でした。

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