高脂肪食を続けてメタボになった糖尿病の前段階では、インシュリンへの感受性が低下し、自然塩症状が活性化されていると考えられる。このような状態では、マクロファージは活性化され、動脈硬化層形成にも重要な役割を演じていることが知られている。
今日紹介するハーバード大学からの論文は、メタボの段階でマクロファージが常に悪者というわけではなく、神経炎に対しては神経を守る作用を持つことを明らかにした研究で、2月12日に Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Macrophages protect against sensory axon loss in peripheral neuropathy(末梢神経炎でマクロファージは感覚神経アクソンの喪失を防ぐ)」。
この研究は、肥満によるインシュリン抵抗性を伴うメタボマウスを誘導することで糖尿病で見られるような末梢神経異常、すなわちアロディニアと呼ばれる、小さな刺激を痛みとして認識する感覚と、逆に熱に対する感受性の低下を誘導できるか調べている。マウスに高脂肪食を与えて HbA1 が高値を示す前糖尿病状態を誘導し末梢感覚神経機能を調べると、高脂肪食摂取8週目ぐらいからアロディニアが発生し、また熱に対する感覚の低下を誘導できることを示している。要するにメタボになると、糖尿病まで進まなくても末梢神経異常が発生する。
このとき、熱に対する感覚鈍磨は続くが、アロディニアは高脂肪食を続けていても24週目では殆ど回復する。これは、感覚神経自体が機能しなくなったためと考えられる。実際、アロディニアが発生する時期から皮膚に分布する感覚神経繊維の端末の数が急速に低下することがわかる。すなわち神経変性が始まったことを示しており、糖尿病性神経症に近いモデルができたことになる。
この神経変性の原因は炎症であることがわかっているので、感覚神経周囲の血液細胞を single cell RNA sequencing で調べると、殆どの細胞で変化が見られない一方、マクロファージの数が12週ぐらいで急速に増加していることがわかった。ただ、マクロファージの遺伝子発現を調べると、神経に外傷を加えたときの修復に関わるマクロファージのタイプで、細胞障害性のマクロファージではないことがわかった。すなわち、神経変性は主に自然炎症により誘導され、それが新鋭端末障害に進むと修復のためにマクロファージが浸潤することがわかった。
これを確認するため、マクロファージの浸潤に必要なケモカイン受容体をノックアウトしたマウスでは、高脂肪食でメタボ状態は同じように誘導できても感覚低下が抑えられることがわかった。すなわち、浸潤してきたマクロファージには神経保護作用がある。このマクロファージは損傷修復にも関わるガレクチン3を分泌しているので、ガレクチンノックアウト実験も行い、感覚神経変性を抑えられることを示している。
以上が結果で、例えば動脈硬化のようにマクロファージは悪者として研究を始めたのではないかと思いが、期待に反して神経変性を防いでいることがわかったという、意外性がこの研究の売りになるだろう。考えてみるとアルツハイマー病でミクログリア細胞の活性化は神経変性を誘導すると考えられているが、一方でアミロイドβ を除去するのにも役立っている。全てに2面性が存在するのが生命と言える。
神経変性は主に自然炎症により誘導され、それが神経障害に進むと、修復のためにマクロファージが浸潤する!
Imp:
マクロファージ!
対固形腫瘍戦略ではCAR-Mも注目されていますが。。。