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8月21日朝日社説:医療の改革 患者の協力も必要だ

2013年8月21日
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朝日新聞は記事のペーストを許可していません。オリジナルな社説は以下のURLを参照ください。 http://digital.asahi.com/articles/TKY201308200551.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201308200551

原則として報道ウオッチは論文発表の研究に対する報道を対象としているが、今日は朝日の社説の書きぶりが少し気になったので取り上げてみた。「医療の改革 患者の協力も必要だ」と言う社説で、8月21日に閣議設定される社会保障改革について意見だ。今回の案では、「医療機関の設備戦争につながり、過剰医療と医療費高騰を生む医療機関のフリーアクセスを考え直すべき」とうたわれる。社説では、「かかりつけ医が住民に信頼されるかどうかにかかる」という改革案の本質を見抜いている。しかし、結論としては報道中立の原則にとらわれて、「患者に我慢をしいて、簡単な話ではないが・・・将来世代に付け回し出来ない」と結んでいる。しかしこれでは社説でも何でもない。私は科学報道を中心に見ているが、現在の報道が、「出来事を最も常識的にまとめて伝える」事ばかり考えているように見える。少なくとも社説ぐらいはもっと本質を見抜いた将来への提案がほしい。かかりつけ医が信頼されることがこの案の鍵であることは私も同感だ。 
  改革案をまじめに進めるとすると、結局かかりつけ医が信頼されるようになるしかない。そのために何が必要か?最も大事なのは、かかりつけ医の医療知識、技術レベルが高いレベルで安定する事に他ならない。従来これについては教育と倫理の問題で片付けて来た。しかし、IBMの創業者の名前(?)をとった診断ソフトや、ゲノム解析の一般化など、患者さんやかかりつけ医の標準化を促進する新しいトレンドが生まれている。前に紹介したPatientlikemeのように、かかりつけ医の信頼性を、患者さんの知識が補っていく可能性すらある(collective intelligenceでいつか紹介したい)。
  IBMは新しいシークエンサーを開発して100ドルゲノムを目指している。GoogleはGoogle healthでは失敗したようだが、そこから派生した23&meはゲノム解析ビジネスの代表になっている。このように、新しい技術が医療を先端だけでなく、底辺から変えようとしている。また、将来のアジェンダを見据えている企業は既に様々な対応を進めている。そんなとき、もっともらしい話で社説を済ませる気が知れない。
 では私に案はあるのか?いくらでもある。なぜなら、21世紀のアジェンダが患者側からの医療や医学の変革だと確信しているからだ。この視点で見れば、多くの可能性が見えてくる。例えば分子標的薬の中には、これまで大病院でしか可能でなかった治療を、かかりつけ医で対応できるようにするポテンシャルを持った物もがある。今後はこのコラムでいろいろ紹介していきたい。

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