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3月27日 オウムは発声する前にその構造を脳内で構想している(3月19日 Nature オンライン掲載論文)

2025年3月27日
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人間とチンパンジーを比べた時、言葉を話すかどうかが最も顕著な違いだが、これは文章を理解したり構想したりする高次構造の違いだけでなく、発声の脳神経支配の違いも重要な要因であると考えられている。特に声帯を動かす喉頭の筋肉支配は人間では運動やからシナプスを介さず直接筋肉に投射することで複雑な音声を可能にしている。しかし、チンパンジーではこの回路が存在しない。

この回路は言葉の発生に必須で、なぜこのような回路が進化したのかを考えてみると、勝手な想像に過ぎないが動物や鳥の鳴き声のモノマネをするために発達したのではないかと思っている。例えば狩で動物の声を真似ることで警戒心を解くといった具合だ。これが次の段階でオノマトベといった擬音へと体系化し、このイコン型の言葉が、どこかの時点でシンボル型の音と対照に全く関係がない言葉が生まれたと考えられる。と考えると、モノマネの上手いオウムは当然人間と同じような発生の仕組みを持っていることになり、実際前運動中枢から直接鳴管への神経支配が存在する。オウムも人間も真似るためには、学習した音の配列を構想し、それを直接筋肉に伝えて発生する必要があり、人間では発声前に文章の構想が音の構想として表象されることがわかっている。

今日紹介するニューヨーク大学からの論文は、インコの発生学習経路にあたる前弓状核 (AAC) で、我々と同じように発生センテンスが構成されていることを示した研究で、3月19日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Convergent vocal representations in parrot and human forebrain motor networks(人間とオウムの前脳運動回路では発声構文の表象が収束している)」だ。

この研究ではまず、人間、インコ、そしてフィンチでの発生時の前脳運動野の興奮を調べ、発生の前に前脳運動野で複雑な神経興奮のパターンが見られることを確認する。

そこで、より複雑な発生が可能なインコについて、シラブルを聞いた時の AAC の神経興奮を調べ、神経がどのような音の要素に対応しているのかを特定している。

そしてオウムが発生する時、AAC での各要素に対応する神経細胞がセンテンスに対応して興奮し、センテンスを表象していることを明らかにしている。また、音の要素としての最も重要なピッチについても、おなじ AAC の神経興奮が各ピッチを表彰していることを示している。

最後にこれらがセンテンスを本当に表象しているかどうか、オオム発声時の AAC 興奮を学習させたデコーダーを作成し、このデコーダーで実際の AAC の神経活動と発声されたセンテンスの解読ができているかを確認し、AAC でピッチも含む発声センテンスの表象が形成されていることを証明している。

おそらく将来は、人間で行われたように AAC を刺激することで発声をコントロールするという実験に進むと思うが、音をまねることが言葉の発声のスタートラインだと考えると面白い研究だ。

  1. okazaki yoshihisa より:

    音をまねることが言葉の発声のスタートラインだと考えると面白い研究だ。
    imp.
    なかなか興味深い視点です!

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