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4月4日 レット症候群の遺伝子治療(4月2日Science Translational Medicine 掲載論文)

2025年4月4日
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MECP2はX染色体上に位置する遺伝子で、機能が失われる変異が起こるとレット症候群が発症する。通常の変異では男性は出生直後に死亡するが、女性の場合半分のX染色体では正常なため、欠損細胞と正常細胞のモザイクが形成されるが、この半数の細胞が異常のまま残っていることから神経システムの異常が起こる。逆に細胞は残っていることから、2007年、MECP2遺伝子変異を元に戻すと、様々な症状を改善させられるということがマウスで確認された。

この結果は、レット症候群の遺伝子治療の可能性を示すのだが、問題は正常と異常細胞がモザイクになっていることで、遺伝子導入を欠損細胞だけに行うことは至難の業になる。ともかく遺伝子を導入してみるという可能性はあるのだが、MECP2重複症はこの遺伝子の発現量が増えるだけでやはり問題が起こることを示しており、正常細胞に遺伝子が導入されたときに様々な問題が起こることが懸念される。

このため、MECP2重複症と比べて遺伝子治療は簡単でないとされてきた。しかし、今日紹介するエジンバラ大学からの論文は、導入する遺伝子の発現をセルフコントロールさせることで、モザイク組織が対象のレット症候群も遺伝子治療が可能になることを示した研究で、4月2日 Science Translational Medicine に掲載された。タイトルは「Self-regulating gene therapy ameliorates phenotypes and overcomes gene dosage sensitivity in a mouse model of Rett syndrome(自己調整的遺伝子治療はレット症候群のマウスモデルで遺伝子発現量に対する感受性の問題を克服し症状を改善する)」だ。

増殖しない神経細胞が対象の遺伝子治療にはアデノ随伴ウイルスがベクターとして用いられるが、導入効率は良くても、どうしても細胞ごとに導入量が変化し、これが発現しすぎによる異常を誘導してしまう。そこで、発現量がむやみに上がらないよう、導入遺伝子自身の RNA を分解する人工的 miRNA を組み込んで、一定以上に発現が上がらないようにしたのがこの研究のハイライトだ。

面白いアイデアだが、本当に正常の遺伝子発現が起こっている上に導入したとき、この程度の工夫で大丈夫かと思ってしまう。理想は MECP2 の発現量に依存して導入遺伝子が働くようにできるといいのだが、これは複雑になりすぎる。

しかし案ずるより産むがやすしで、このコンストラクトを生まれた後死亡していく欠損オスの脳に導入すると、30週も生存するマウスが出てくる。平均では生存期間はほぼ倍に伸び、症状も改善する。この系でさらに遺伝子発現などを至適化すると平均で生存期間が30週を超えることがわかり、この至適化したコンストラクトを NGN-401 として臨床応用できる製剤にしている。

次に、生存には影響のないレット症候群の雌マウスの新生児期に遺伝子治療を行っている。NGN-401 は大量に投与してもほとんど生存に影響はないが、miRNA を削ってそのまま発現するようにするとマウスは死亡するので、MECP2 の発現がコントロールできないと重篤な問題が起こることが確認できる。

重要なのは症状がある程度改善できることで、正常よりは劣るが体重増加が認められる。様々な時期に脳組織をとって調べても、正常とはっきり区別できないことから、組織学的にも回復が見られると結論している。

最後に、臨床試験への安全性を確かめるため、新生児サルへ投与実験が行われ、正常サルへの副作用はほとんどないことを確認している。

また NGN-401 は現在第1/2相の臨床治験まで進んでいることも加えて報告しておきたい。是非成功してほしいと思う。もちろんレット症候群だけでなく、MECP2重複症も臨床治験に入っている遺伝子治療が2種類存在することを考えると、実際の治療が近づいてきた実感がある。期待している。

  1. okazaki yoshihisa より:

    1:増殖しない神経細胞が対象の遺伝子治療にはアデノ随伴ウイルスがベクターとして用いられる。
    2:導入効率は良くても、細胞ごとに導入量が変化し、これが発現しすぎによる異常を誘導してしまう。
    3:発現量がむやみに上がらないよう、導入遺伝子自身のRNAを分解する人工的miRNAを組み込んで、一定以上に発現が上がらないようにしたのがこの研究のハイライトだ。
    4:NGN-401は現在第1/2相の臨床治験まで進んでいる。
    5:MECP2重複症も臨床治験に入っている遺伝子治療が2種類存在する。
    Imp:
    Dualベクターで治療タンパク質を分割デリバリー。
    細胞内で結合させて発現とか。。。
    遺伝子治療の技術の進歩には驚きます。
    治験成功をお祈りしております。

    1. nishikawa より:

      安く提供してほしいです。

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