AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 6月26日 寝る子が育つメカニズム(6月24日 Cell オンライン掲載論文)

6月26日 寝る子が育つメカニズム(6月24日 Cell オンライン掲載論文)

2025年6月26日
SNSシェア

寝る子は育つという言い伝えは日本だけではない。Chatに聞いてみると、ドイツでは “Kinder wachsen im Schlaf” 、フランスでは “Le sommeil fait grandir les enfants” 、そして中国では「小孩子要多睡觉、长得快」と、全く同じ言い伝えがある。即ち万国共通の観察だが、この原因は1969年成長ホルモン (GH) のほとんどは睡眠時に分泌されているという論文が Science に発表され、この GH の分泌パターンを先人が観察していた結果であることがわかっている。ただ、夜に GH を分泌するメカニズムについてはわかっていなかったようだ

今日紹介するカリフォルニア大学バークレイ校からの論文は、睡眠と GH分泌の関係を神経回路レベルで詳しく解析した研究で、6月24日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Neuroendocrine circuit for sleep-dependent growth hormone release(睡眠で成長ホルモンが分泌される神経内分泌回路)」だ。

成長ホルモンは成長ホルモン放出ホルモン (GHRH) と GH分泌を抑制するソマトスタチン (SST) により調節されているが、この研究では GHRH を分泌する視床下部・弓状核を光遺伝学的に刺激できるマウスを作成、この神経細胞を同じように刺激しても GH分泌は睡眠中の方が高いことを発見する。

次に GHRH を抑制して分泌抑制に働く STT神経について探索し、一つは脳室周囲核から直接下垂体に投射する回路と、弓状核で同じ領域の GHRH神経に投射している回路を特定する。それぞれは GABA 作動性の抑制神経で、刺激により前者は直接 GH分泌を抑制し、一方後者は GHRH神経に働いて強く GHRH、続く GH を抑制することを確認している。

次に、SST神経と睡眠の関係を調べると、睡眠時に活動が低下していることがわかった。即ち覚醒時には GHRH や GH の分泌を SST神経が抑制しており、この抑制が外れることが睡眠時の GH分泌上昇に関わることが明らかになった。

最後に、視床下部内で GH受容体を発現する細胞を探索し、GH分泌に応じてこの回路を制御できるフィードバックループを探索し、睡眠を妨げる働きを持つとされている青班核内のノルアドレナリン神経が GHに反応して興奮することを発見し、睡眠と連動した GH分泌回路が、睡眠自体も調節することを明らかにしている。

以上が結果で、寝る子は育つ→睡眠中の GH分泌→視床下部弓状核、脳室周囲核、青班核をつなぐ神経分泌回路というつながりが明らかになった。神経研究としてはオーソドックスだが、寝る子が育つ回路を特定しようという着想がこの研究のハイライトだと言える。

  1. okazaki yoshihisa より:

    覚醒時にはGHRHやGHの分泌をSST神経が抑制しており、この抑制が外れることが睡眠時のGH分泌上昇に関わることが明らかに!
    Imp:
    寝る子が育つ回路は実在した!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。