細菌やウイルスと比べると、肉眼的大きさの寄生虫を我々はどのように対処しているのか、イメージするのは簡単ではない。IL-4や IL-13などのサイトカインが中心にあり、Th2細胞を誘導により局所に好酸球や好塩基球が局所に浸潤する特殊な炎症を誘導し、さらに IgEアレルギー反応まで動員して寄生虫の排除に当たる。
今日紹介するハーバード大学からの論文は、Th2細胞はIL-4を介して腸管の感覚神経系を動員して寄生虫に対する免疫反応を増強していることを示した研究で、7月17日 Science に掲載された。タイトルは「Type 2 cytokines act on enteric sensory neurons to regulate neuropeptide-driven host defense(2型サイトカインは腸管感覚神経に働き神経ペプチドによりホストの防御反応を調節する)」だ。
以前から寄生虫免疫では腸管神経系も様々な神経ペプチドを分泌して関与することが知られていた。この研究では免疫系と神経系の関係を探るため、single cell RNA sequencing を用いて神経系が発現する遺伝子を調べ、2つの神経ペプチドを neuromedin U(NMU)とcalcitonin gene-related peptideβ(CGRP) を発現している腸管感覚神経が、寄生虫免疫の核となっているサイトカイン IL-4や IL-13シグナルを伝える全ての遺伝子を発現していることを発見する。まさに、寄生虫免疫を考える上で最も太いパイプが神経系と免疫系の間につながった。しかも、IL-4を投与すると NMU や CGRP の分泌が20-200倍上昇することを発見する。
生体内でこのパイプの寄生虫免疫での機能を調べるため、腸管感覚神経特異的に IL-13受容体をノックアウトして、IL-4 や IL-13 に反応しないようにして、ネズミの腸に寄生する回虫(ポリギルス)を感染させると、正常と比べ寄生している回虫や卵の数が増加する。すなわち、神経系の動員は寄生虫を抑制していることがわかる。また、IL-4 に神経が反応できなくても、マウスに神経ペプチドを投与すると寄生虫の活動を抑えられるので、IL-4 に反応した感覚神経は、神経ペプチドを分泌することが寄生虫抑制のメカニズムであることがわかる。
残るは神経ペプチドが寄生虫の活動を抑制するメカニズムだが、神経から分泌される神経ペプチドが結合する受容体は腸管の筋肉層に存在する自然免疫に関わる ILC2細胞に発現しており、ペプチド刺激により IL-5 が誘導され、これにより好酸球が寄生虫の周りに誘導されることで寄生虫を閉じ込めることがわかる。
加えて筋層に存在するマクロファージは、IL-4と神経ペプチドの作用で寄生虫と接着する分子や、寄生虫免疫に関わるArg1をはじめとする様々な分子を発現し、また好酸球の遊走を促すケモカインも発現することで、ILC2 が分泌する IL-5 とともに好酸球の局所への浸潤を促進することで、寄生虫を抑制していることを示している。
以上が結果だが、まず神経細胞が IL-4 に直接反応することに驚くが、寄生虫は、神経、Th2免疫細胞、そしてマクロファージや ILC2 などを総動員しないと対応できないやっかいな対象であることがよくわかる論文だった。
神経細胞がIL-4に直接反応することに驚く
寄生虫は、神経、Th2免疫細胞、そしてマクロファージやILC2などを総動員しないと対応できないやっかいな対象!
Imp:
IL-4に反応した感覚神経が神経ペプチドを分泌することが寄生虫抑制のメカニズムだったとは!