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12月22日 CAR-樹状細胞(12月17日 Science Translational Medicine 掲載論文)

2025年12月22日
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CAR : 抗原受容体キメラというと、ガン抗原特異的抗体とT細胞刺激分子のキメラ分子をT細胞に導入してガンを傷害させる方法を指し、ガンに対する免疫をよりコントロールしやすい治療法として臨床応用が進んでいる。

これに対し今日紹介するスイスローザンヌ工科大学からの論文は、CARを樹状細胞に導入してガンの抗原により活性化されるようにし、ガンが排出するエクソゾーム (EV) を取り込んでガン免疫の成立を助けるCAR-樹状細胞 (CAR-DC) の可能性を追求した研究で、12月17日 Science Translational Medicine に掲載された。タイトルは「Coordinate tumor-antigen uptake and dendritic cell activation by chimeric antigen receptors(キメラ抗原受容体を用いて抗原の取り込みと樹状細胞の活性化を強調させる)」だ。

この研究の前提は、ガン細胞からガン特異的抗原を発現したEVが排出され、この中には他にもガン由来タンパク質やRNAが詰まっていることだ。従って、ガン由来EVをアクティブにDCに取り込ませることが出来ればガン特異的免疫反応の誘導効率を上げることができると着想した。

そこで、CAR-Tにも利用されるHER2に対する抗体を、様々なシグナル分子とキメラにしてDCに導入し、CD86の発現を指標にDC活性化を誘導できるCARを探索、最終的にCD40の細胞内領域と、Fc受容体の細胞内受容体を合わせたCARを、DC活性化効率の高いCARとして確立する。

次にメラノーマをガンモデルとして利用する目的でHER2抗体の代わりにGD2に対する抗体に変えて、GD2を発現するメラノーマ由来EVをCAR-DCに加える実験を行い、活性化型のDCに変化して炎症性サイトカインを分泌、また貪食能が高まり、MHC抗原の発現も上昇して、免疫刺激型のDCに変化することを明らかにする。

卵白アルブミンを発現するメラノーマを用いて、GD2-CAR-DCによってガン抗原に対するT細胞を誘導できるか調べると、期待通りGD2-CAR-DCは卵白アルブミンを含むメラノーマに対する免疫反応を誘導出来ることを確認している。

次に、メラノーマをマウスに移植、4日後、あるいは1週間後にGD2-CAR-DCをPD-1に対する抗体とともに静脈注射する実験を行うと、いずれの場合も完全ではないがガンの増殖を抑えることを確認している。ただ、効果が弱いので、効果を上げるために細胞内ドメインのアミノ酸を変化させ、分解されにくいCARに変えると、より抗ガン効率が上がることを示している。

DCはガン局所でT細胞を刺激する運び屋としても研究が進んでいるが、この研究ではさらに活性化されたときだけIL-12が分泌される遺伝子コンストラクトを導入したGD2-CAR-DC-IL12も作成し、これを使うことでさらに強いガン抑制効果があることを示している。

この方法の利点は、一つのガン抗原に縛られないことで、DCのT細胞刺激能を高めることで、様々なガン抗原に対するT細胞反応を誘導できることだ。実際、反応するT細胞を調べると、CAR-DC-IL12により多くのT細胞クローンが反応することが確認されている。

最後に、ヒトの血液から精製したDCを同じように改変し、EVによって活性化されることを確かめ、臨床にも使えることを示している。

以上が結果で、DCを使うことで、免疫チェックポイント治療に抗原特異性を付与して、本来のがん免疫療法に転換できることを示している。おそらくこの実験で行われたDCの静脈注射の代わりに、ガン局所へのDC注射が最初の治療としては現実的だと思うが、CAR-Tと比べるとホストの免疫反応を信じる必要がある。個人的には魅力的方法だと思う。

  1. okazaki yoshihisa より:

    1:一つのガン抗原に縛られないことで、DCのT細胞刺激能を高めることで、様々なガン抗原に対するT細胞反応を誘導できることだ。
    2:反応するT細胞を調べると、CAR-DC-IL12により多くのT細胞クローンが反応することが確認されている。
    3:ガン局所へのDC注射が最初の治療としては現実的
    Imp:
    抗原スプレッティング現象は肝!
    腫瘍内局所治療という概念。

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