少し気になった治療方法の論文を立て続けに目にしたのでまとめて紹介する。
まず最初のケンブリッジ大学を中心とする論文は、狭心症発作や心筋梗塞など急性冠動脈症候群に見られる炎症を、低容量のIL-2で抑制できるか調べた第2相治験で、1月8日 Nature Medicine に掲載された。タイトルは「Anti-inflammatory therapy with low-dose IL-2 in acute coronary syndromes:a randomized phase 2 trial(急性冠動脈症候群に対する低容量のIL-2を用いる抗炎症治療:無作為化第2相治験)」だ。
坂口さんのノーベル賞で有名になったと思うが、他のT細胞と比べて制御性T細胞 (Treg) はCD25を強く発現していることから低い濃度のIL-2にも反応できる。従って低い濃度のIL-2を投与することでTreg全般を高め、免疫による炎症を抑えることが期待される。そこで狭心症発作の頻発する患者さんや心筋梗塞の患者さんで、PETで冠動脈の炎症がはっきりしている人を選び、無作為化後、IL-2あるいは偽薬を最初5日間は毎日、その後14週まで1週ごとに皮下注射している。
結果だが、治験を途中で止めざるを得ないようなケースは1例だけで、冠動脈の炎症を抑制し、2年の経過で重大な冠動脈の再発を抑えることができている。また期待通り、血中のTregの数は治療直後から20%程度上昇し、その後も維持されるが、他のT細胞には大きな変化がなかった。
以上が結果で、免疫性の炎症を抑える効果は証明されたが、CRPがほとんど正常化しないことからIL-6など他の炎症はそのままになっていると考えられる。確かに効果はあるが、がん免疫の抑制など見えない効果もあると考えると、高容量スタチンなど、これまでの方法の方が安全に思える。
次のノバルティスからの論文は、脊髄筋萎縮症の薬剤として開発された Branaplam をハンチントン病に使おうと行われた第2相治験で、1月5日 Nature Medicine にオンライン掲載された。タイトルは「Oral splicing modulator branaplam in Huntington’s disease: a phase 2 randomized controlled trial(経口スプライシングを変化させる薬剤 branaplam のハンチントン病への効果:無作為化対照第2相治験)」だ。
Branaplam は脊髄筋萎縮症の原因遺伝子 SMN2のmRNA のエクソン7スプライス調節領域に直接結合し、エクソン7がスキップされるのを抑制する薬剤として開発された。ただ、同じ時にロッシュグループにより開発された SMN2mRNA により特異性がある Risdiplam と比べると特異性が低く、神経毒性があるとして脊髄性筋萎縮の治療薬として認可されなかった。
ただ、脊髄性筋萎縮症の治験中に、ハンチントン病原因分子ハンチンティン (HTT) の脊髄液中の濃度が低下することが観察されたので、ハンチントン病に使えるのではと治験が行われたのがこの研究になる。結果は以下のようにまとめることができる。
- まずHTTを抑えるのに有効量を投与した患者さんのほとんどで末梢神経症を中心に副作用が発生し持続する。
- 神経が全般的に傷害されたことを示すニューロフィラメントが急速に上昇し、正常細胞にも影響があることをうかがわせる。ただこの上昇は30週ぐらいで正常化する。
- 脳脊髄液中のHTT分子は30%低下する。
- 脳室が拡大し、脳の萎縮が見られる。
以上が結果で、経口薬とは言え使うかどうか悩ましいデータだ。現在髄腔内にmiRNAを投与してHTTを抑制する治験が第3相へ進んでいるので、手技が必要とはいえ、miRNAが第一選択になる気がする。
最後のテキサス大学ガルベストン校からの論文は、アフリカで毎年5000人の死者が出ているラッサ熱を、経口摂取可能なRNAアナログ 4fluorouridine (4FU) で治療する可能性を示す、サルを使った前臨床研究で、1月7日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Oral 4′-fluorouridine rescues nonhuman primates from advanced Lassa fever(4-fluorouridineの経口摂取は進行したラッサ熱の治療薬になる)」だ。
まずアフリカミドリザルを用いた致死的ラッサ熱感染実験システムを確立し、致死量のウイルス感染6日後から投与を始めている。結果は明確で、全てのサルが死亡する実験系で、全てのサルが生存する。また、血中ウイルス量も、4FU投与後すぐから低下してほぼ2-3週間で完全に検出できなくなる。これと交代に、ウイルスに対する抗体が12日ぐらいから上昇し、免疫が成立する。
他にも病理や遺伝子発現を調べているが割愛する。核酸アナログなので副作用の方は覚悟する必要があるが、短期治療で済むことから治験が行われると思う。

1.免疫性の炎症を抑える効果は証明されたが、CRPがほとんど正常化しないことからIL-6など他の炎症はそのままになっていると考えられる。
2.確かに効果はあるが、がん免疫の抑制など見えない効果もあると考えると、高容量スタチンなど、これまでの方法の方が安全に思える。
imp.
なかなか面白い着眼点の治験でした。