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1月15日 eGENESIS社のブタ腎臓に対する免疫反応:1報告(1月8日 Nature Medicine オンライン掲載論文)

2026年1月15日
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昨年注目された医学の進歩の一つは、69種類の遺伝子改変を加えたブタ腎臓を移植された67歳の男性が、拒絶反応を乗り越え退院するまでに回復したというニュースだ。残念ながら、6ヶ月目に拒絶反応とは無関係思われる心臓発作で亡くなるが、このブタ腎臓を確立した eGENESIS社は腎臓移植を待つ患者さんの希望の星になっているという。

今日紹介するハーバード大学からの論文は、この患者さんの移植後の血液及び組織の免疫反応を詳しく調べた研究で、さらなる改良の方向性を知るために極めて重要な研究だ。タイトルは「Immune profiling in a living human recipient of a gene-edited pig kidney(遺伝子改変ブタ腎臓を移植された患者さんの免疫プロファイル)」で、1月8日Nature Medicineに掲載された。

研究では移植前、移植後7、13,20,26,33,51日目に採決を行い、single cell RNA sequencing も含め、徹底的に様々な免疫学指標を調べている。また、必要に応じてバイオプシーも行い、拒絶反応の可能性を調べている。膨大なデータなので詳細は省いて、読んでいて興味を引いた点をいくつか箇条書きにしていく。

  1. 拒絶反応に備えて、患者さんには胸腺細胞抗体、CD-20抗体、大量ステロイド、抗C5抗体をまず投与、その後TNF抑制抗体、タクロリムス、ミコフェノール酸、プレドニンを維持療法として使っている。この結果、投与1週目にはB細胞、CD8、CD4細胞の数は減少し、またケモカインやTNF等も期待通り抑制されている。
  2. 一方で、自然免疫反応は、白血球やNK細胞の増殖と、それを誘導するTLR刺激によるNFkBシグナル、IL-6等の炎症性サイトカインの活性上昇、同じくインターフェロンシグナルの上昇がみられる。すなわち、獲得免疫反応は抑制できるが、自然免疫は移植後持続し、レベルも増大する。
  3. TやB細胞に対する免疫を抑制し、その効果が末梢血でも見られるにもかかわらず、8日目に典型的移植拒絶反応が発生している。これは、ブタ腎臓から末梢血へ放出されるDNAからもはっきり診断でき、拒絶反応が見られる間はDNAの放出が1000倍近く上がる。幸い、通常の免疫抑制を続けることで、この反応を抑えることに成功している。
  4. 末梢血のリンパ球は抑えられているにもかかわらず、拒絶反応が起こったときの腎臓バイオプシーではCD4、CD8T細胞や、M1マクロファージの上昇が観察できることから、リンパ節などに持続していたリンパ球が浸潤したと考えられる。面白いのは、脳死の患者さんを対照にブタ腎臓を移植した場合、免疫拒絶が見られない点で、患者さんの状態や、免疫抑制の強さなどの違いを反映しているのかもしれない。いずれにせよ、初期の拒絶反応は抑えられる可能性が十分ある。
  5. サルを用いた研究では、ブタ抗原に対する抗体が拒絶の主役になっていることが報告されているが、この反応は人間では認められていない。

以上が面白いと思った点だ。残念ながら、この研究ではTregについてはほとんど検討できていない。今後新しい免疫抑制法を開発していくことが重要であることがわかる。そして何よりも、自然免疫刺激は69種類の遺伝子改変でも起こっている。この刺激がブタ組織のどの分子によるのか、これが明らかになると、拒絶の問題の解決に近づくと思う。

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