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2月27日 他家間葉系幹細胞移植による運動機能の改善(2月25日 Cell Stem Cell オンライン掲載論文)

2026年2月27日
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様々なソースから樹立した間葉系幹細胞 (MSC) を抗老化に利用する治療が拡大している。多くの場合メカニズムを飛び越して臨床に進んでいる印象があるので心配だが、昨年6月に紹介した北京大学の論文では、抗老化作用を持つFoxo3を導入したMSCが、アカゲザルの様々な機能を改善し、年齢で言うと5歳若返らせたという論文には驚いた(https://aasj.jp/news/watch/26944 )。MSCによる抗老化治療のブームを予感させる。

抗老化作用を期待してMSCを静脈注射する治療法は以前から盛んに行われており、特にマイアミ大学のグループは骨髄由来MSCを一回だけ静脈注射する介入の治験を2017年に発表し、自覚症状とともに一定時間に歩く距離を伸ばすことが出来ることを論文発表していた(Journals of Gerontology: Medical Sciences、2017, Vol. 72, No. 11, 1505–1512)。そして、この治験をベースにFDAの認可を受けるべくMSCを Laromestrocel と名付けた製品化し、昨年4月アルツハイマー病患者さんに投与するプラシーボをおいた無作為化第二相治験を行い、症状とともに脳萎縮を抑える可能性を示した論文を、Nature Medicine に発表している(Nature Medicine , 2025: 31,1257–1266)。

そして今日紹介する同じグループからの論文は、製品化した Laromestrocel が筋肉老化による運動機能の低下を抑えること、そしてその背景にMSCから分泌されるメタロプロテアーゼ阻害分子がある事を示した研究で、2月25日 Cell Stem Cell に掲載された。タイトルは「Randomized phase 2b dose-escalation trial of stem cell therapy with Laromestrocel for aging frailty(老化に伴う虚弱に対する Laromestrocel の無作為化容量エスカレーション第二相治験)」だ。

研究自体は先に挙げた2017年の論文とほとんど変わっていない。ただ、マイアミ大学のグループは、大学からスピンオフし Longeveron と言う会社を設立しており、論文はこの会社から発表されている。またNature Medicine の論文から、細胞製剤として製品化した治療法の治験になっており、FDA認可申請が視野に入っている。そして、そのためのバイオマーカー開発とある程度のメカニズムの提案が行われている。

対象は70歳から85歳の男女で、軽度から中程度 Frail と診断され、6分間に200−400m歩く能力を持っており、TNFα が上昇して老化による炎症が検出されることを条件としている。これまでの研究で、Loromestrocel の重要な作用の一つが炎症を抑えることを示しているので、わざわざ TNFα を対象選択の条件としている。

注射された細胞数は、25−200milionで、注射による副作用は全くないとしている。さて結果だが、6分間に歩く距離が、投与した量に応じて改善し、200milionグループは投与後9ヶ月で40mも長く歩けるようになっている。6分で平均300mほど歩くグループなのでその改善程度は大きい。また、歩く距離の改善と平行して、様々なFrailtyスコアも改善している。

結果は以上だが、この研究の最重要ポイントは、血中のTie2分子の低下を治療効果のバイオマーカーとして使えることを示した点だ。Tie2は血管内皮が発現している膜分子だが、間質のメタロプロテアーゼにより切断され血中に流れてくる。Frailtyが進んで炎症が高まると、血中のTie2が上昇する事になる。この上昇を投与細胞数に応じて強く抑制することが出来ることから、効果のバイオマーカーになると提案している。すなわち、Laromestrocel は間質細胞として、Tie2を刺激するアンジオポイエチンなど様々なサイトカインを分泌するとともに、メタロプロテアーゼを阻害して、膜分子の切断を抑えることで、効果を示すというわけだ。

個人的には、一般美容診療にまで拡がりを見せるMSC治療にあまりいい印象はないが、しかし製品化と無作為化治験を経てFDAが認可するとなると、展開のフェーズが変わるような気がする。現在FDAが認可したMSC製剤は小児のGvHを押さえる Remestemcel 一つだけだと思うので、認可のハードルは高いが、さてどうなるか。

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