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3月7日 生体でのシヌクレイン凝集をモニターできるマウスを用いたシヌクレイン症解析(3月4日 Cell オンライン掲載論文)

2026年3月7日
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2日目の今日は、北京の国立生物科学研究所からの論文で、パーキンソン病 (PD) 、レビー小体認知症、多系統萎縮症などのシヌクレイン症の進展を生きたマウスでモニターできるマウスの開発と、それを用いたパーキンソン病の細胞レベルの解析で、タイトルは「Genetically encoded fluorescent reporters to visualize α-synuclein pathology in live brain(遺伝的にコードされた蛍光リポーターを用いて生きた脳でのシヌクレイン病理を可視化する)」だ。

シヌクレインがPD等の原因である事が明らかになり、またシードと呼ばれる異常凝集シヌクレインが神経から神経へと伝搬して病気が広がることがわかって、この過程をモニターするためにシヌクレインを蛍光標識したマウスが作成され、凝集体を観察することは行われてきた。この過程で、凝集することで分子が集まって蛍光が上昇する事も報告されてきた。ただ、凝集体だけより選択的にモニターする試みはほとんど行われてこなかった。

おそらくこの研究もシヌクレインを蛍光ラベルしたマウスを使う中から始まったと思うが、凝集線維に取り込まれたときだけよりはっきりと蛍光が検出できる可能性があると着想し、シヌクレインとGFP蛍光タンパク質の間のリンカーを変化させて、最終的に凝集したときに蛍光強度が5倍以上になるリンカーを発見する。

このキメラ遺伝子を発現する細胞はもちろん蛍光を発しているが、シヌクレインのシードを加えて凝集を促進すると蛍光が5倍以上に上昇する。都合のいいことに、C末端に蛍光を結合させていることから、蛍光シヌクレイン自体は凝集しない。しかし、正常シヌクレインが存在し、それが凝集を始めると線維に取り込まれて蛍光が高まる。おそらくリンカーはこの時取り込みやすくする役割を持っている可能性があるが、この点については検討されていない。

この蛍光シヌクレインをマウス脳で発現させてもそれ自体の弱い蛍光が見られるだけだが、そこにシードを注入すると期待通り強い蛍光が注射部位に発生し、時間をかけて他の神経へと伝搬することが観察される。

この伝搬過程を生きたマウスでモニターするため、片方のシヌクレイン遺伝子に蛍光シヌクレインをノックインしたマウスを作成すると、シードを注射した場所にまず凝集が発生し、その後周りの神経へと伝搬するのを2ヶ月以上にわたって追跡することができる。そして、凝集が起こった細胞と、起こっていない細胞を区別して調べることができる。例えば、凝集が発生した神経だけで神経興奮頻度が強く抑制されるが、一回の興奮の強さはあまり変化がない。

このように凝集が存在する細胞と、存在しない細胞を分けることが出来るので、生理学から病理学、そして生化学まで多くのことを単一細胞レベルで調べることができる。

生理学的には凝集によって明確にシナプス機能が低下し、グルタミン酸受容体、GABA受容体ともに低下する。組織レベルの遺伝子発現や質量分析を用いるメタボロームも凝集の有無で調べることもできる。さらに、ドーパミン神経だけでなく、例えばシヌクレイン症で異常が見られるコリン作動性神経を選択的に調べることもできる。

詳細は全て省くがこの解析は圧巻で、知りたいことが徹底的に調べられている。個人的に面白いと思ったのは、凝集が存在するドーパミン神経でドーパミンの濃度が上昇していることで、従来からドーパミンによって最も毒性の高い可溶性シヌクレインオリゴマーが形成されることが知られており、パーキンソン病がドーパミン神経の病気として現れやすいことの理由がよくわかった。

転写レベルで見ると、凝集が起こることでリソゾームのイオンチャンネルが低下し電解質バランスがとりにくくなること、神経増殖因子シグナルが低下することなども面白いが、なによりも凝集を神経興奮を誘導することで抑えられるというマウスを用いた実験も重要だ。この研究では薬剤が用いられているが、他の方法でドーパミン神経の興奮を誘導することは重要な治療になる気がする。

以上、蛍光シヌクレインなどとっくに試されていると諦めるのではなく、目的に合わせてともかく可能性にチャレンジしているのも最近の中国研究の強みになっている。3日目の明日は、神経を通した抗老化の論文を紹介する。

  1. okazaki yoshihisa より:

    凝集が存在するドーパミン神経でドーパミンの濃度が上昇していることで、従来からドーパミンによって最も毒性の高い可溶性シヌクレインオリゴマーが形成されることが知られており、
    パーキンソン病がドーパミン神経の病気として現れやすいことの理由!
    Imp:
    ドーパミンによって最も毒性の高い可溶性シヌクレインオリゴマーが形成されることが確認!

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