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5月26日 ドーパミン刺激によるエピジェネティック変化が妊娠・出産・哺育経験の脳を形作る(5月20日 Natureオンライン掲載論文)

2026年5月26日
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妊娠、出産、哺育を経験することで脳に大きな変化が起こることは間違いがない。なんと言っても長期にわたるホルモン環境の変化は、脳の様々な遺伝子発現に急性だけでなく、エピジェネティックコードの書き換えを介した変化を誘導する。これが母の経験として、その後の子育ての成功率を高める。

今日紹介するマウントサイナイ医科大学からの論文は、母親としての経験にホルモンだけでなく、ドーパミン・エピジェネティックコードの書き換えが貢献していることを示した研究で、5月20日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Dopamine drives persistent remodelling of the maternal brain(ドーパミンは母親の脳の持続的リモデリングを促進する)」だ。

このグループの研究は以前にも紹介したが(https://aasj.jp/news/watch/12774)、研究の対象はヒストンのドーパミン修飾による遺伝子発現の変化で、以前紹介した論文ではコカイン中毒により腹側被蓋で発現するヒストンのドーパミン化の低下が中毒からの離脱を妨げるという研究だった。従って、この研究では妊娠、出産、哺育経験の脳変化が対象になっているが、最初からヒストンのドーパミン化に落とせる過程を探索する過程で、妊娠を対象にすることになったと言える。いずれにせよ、長期にわたる変化は確かにコカイン中毒に匹敵するかもしれない。

妊娠、妊娠+哺育、など様々な母親としての経験を再現したマウスを作成し、哺育までの全ての経験を経たマウス(REマウス)の脳での遺伝子発現の違いを丁寧に調べている。そして、最も大きな変化が記憶に関わる海馬で見られること、変化する遺伝子の多くはエストロゲン受容体をはじめとする転写因子の下流に存在することを確認した上で、ドーパミンに関わる遺伝子発現も大きく変化することを突き止める。

おそらくドーパミンの影響が最もはっきりする、REマウスでの変化を調べ、REマウスの一連の経験の中で、哺育過程で子供から一定期間隔離するストレスがREマウスの経験を帳消しにし、この時ドーパミンにより誘導される変化が強く影響されることを明らかにしている。即ち、哺育過程のストレスによるドーパミン刺激が、REマウスの母親としての経験を帳消しにし、そのとき海馬での遺伝子変化が持続的に変化することを確かめる。

まさにこのグループの土俵に対象を引っ張ってきた感じがする。そして、持続的に発現が変化する遺伝子のヒストンを調べて、REの経験によりドーパミン化したヒストンのレベルが低下するが、ストレスはこのレベルを上昇させることを明らかにする。また、人間の脳でも、出産経験によりドーパミン化ヒストンのレベルが低下することも確認している。

以上の結果は、妊娠・出産・哺育経験の時期には海馬へのドーパミン分泌が抑えられ、持続的エピソード記憶増強の環境が形成されることになる。これを確かめるため、妊娠経験のないマウスでの海馬のドーパミン分泌を光遺伝学的に抑える実験を行い、妊娠経験と同じレベルのエピソード記憶能力を持続させられることを示している。

最後にこの効果が海馬神経でのヒストンドーパミン化の結果である事を示す目的で、ドーパミン化されるグルタミンをアラニンに変えてドーパミン化を阻害するヒストンを海馬神経で発現させる実験を行い、この操作によりRE経験がストレスで打ち消されるのを防げることを明らかにしている。

以上が結果で、ドーパミンを受ける神経でもヒストンのドーパミン化が進むというのはわかりにくいと思うが、このグループはドーパミンの取り込みによりこのような現象が起こるとしている。そのうえで、ドーパミン刺激とヒストンのドーパミン化を調べるための実験系として、妊娠・出産・哺育経験を突き止めたのがこの研究のハイライトで、あとは最もクリアな系でこれを証明している。

Geminiで調べると確かにパーキンソン病患者さんの黒質でヒストンのドーパミン化が低下している論文もあるようなので、今後も注視していきたい分野だ。

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