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6月22日 人間の運動野に表象される身体はホムンクルスではなく抽象的(6月17日 Nature オンライン掲載論文)

2026年6月22日
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昨日の脳PCインターフェースによるALS患者さんの言語機能を回復させる論文で紹介したように、言語が最後に言葉として語られるときに使われる Pre-central gyrus (PGC) の腹側部に電極を設置して500個あまりのニューロンの活動を指標にするだけで、あれだけの言語機能を長期にわたって回復出来るのは驚きだ。よく考えると、言語機能には脳の広い範囲が関わっているはずなのに、運動野の一部でほぼ完璧な言語機能を再現できるのが不思議に思える。これが可能になるのは、PGCに発話のための言葉の表象が投影されるからだが、これを考えるとき、以下のウェッブをクリックして、だれもが一度は見たことのある図、即ちペンフィールドのホムンクルスを見ていただきたい(https://www.flickr.com/photos/bethscupham/7362405446)。この図では身体の各部位を動かす筋肉への支配神経がPGCに沿って手から口までボディーマップに対応して分布しているように絵が描かれている。ただ、我々が腕を動かそうとするとき、ペンフィールドが考えたようにPGC各部位に対する極めて限られた領域だけが興奮するとはまず考えられない。右を動かす場合、左も支配してバランスを保つ必要があり、頭から足まで、様々な領域が関わって初めて運動が可能になる。

この問題を、昨日でも使われた脳内に設置するクラスター電極を用いて再検討したのが今日紹介するスタンフォード大学からの論文で、6月17日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「A mosaic of whole-body representations on the human precentral gyrus(ヒトのの中心前回には身体の全体がモザイクとして表象される)」だ。

結論はタイトルにあるように、我々が手を上げる、あるいは指を曲げると言った運動を意図して、必要な筋肉と結合する最終領域PGCに指令を出すとき、興奮する細胞はPGCの広い範囲にわたっており、決してペンフィールドのホムンクルスに描かれたように限定されていない。

ただ、手術中に脳を刺激したペンフィールドの実験と異なり、この研究ではてんかんの発生部位を特定するためPGCの様々な領域に20電極を持つクラスター電極を設置した患者さんに、’ban‘と発声せよ、口を開けろ、舌を出せ、右向け、手を閉じろ、かかとを上げろ、等など全身にわたる44種類の運動を指示して、対象者がその運動をイメージしたときのPGCの活動を拾っている。昨日のように500個を超える電極を一人の人に設置したのとは異なり、20電極を、患者さんに応じてPGCの異なる場所に設置するため、正確性は少し犠牲になる。

それでも、同じ細胞を追跡すると、例えば右腕腕を上げる時だけでなく、左手を閉じる、首を左に曲げる、更には舌を出すという運動でも興奮する、即ち一つだけの運動に関わる細胞はほとんど存在しないことがわかった。

ではホムンクルスに描かれた領域の違いは全くないかというと、核神経反応の強さをみると、大まかな領域が存在することがわかる。特に昨日の研究でも使われた言葉を話す時に必要なPGCでも腹側領域にある神経は、言葉と顔の動きには興奮するが、手や足の動きではほとんど興奮が見られない。この興奮をPGCにマップすると、最も背側側に特に腕の動きに強く反応するが、左右の四肢の動きに関わる広い領域、続いて言葉や顔の動きにより強く反応する狭い領域、ほとんどの動きに反応する領域、そしてもう一度言葉と顔の動きに反応する広い領域が、背側から腹側にかけて分布することを認めている。

重要なことは、20電極の結果を集めた神経活動パターンから44種類の運動の多くをデコードできることで、モザイク状に分布する神経の様々な程度の興奮が一つの運動を形成していることがわかる。

ではペンフィールドのホムンクルスはねつ造なのか?一個一個の神経の活動を見ると、特に強く反応する運動は確かに存在することから、手術中に行われた刺激は強い反応だけを拾ってしまって、同じ神経が実際には全く違う場所の運動に関わることを見落としてしまった可能性は高い。勝手な想像だが、具象画の世界から、抽象絵画への歴史も、我々が自分の脳について理解し始めた歴史かもしれない。

昨日の研究からもわかるように、運動を起こす指令を出す最終的なPGCは、一つの行動に関わる脳回路の活動が全て表象されてくる。その意味で。ALSのみならず、多くの運動障害の機能回復を構想するためにも重要な領域として今後も研究されると思う。

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