今日紹介するカナダ・マクギル大学からの論文を読むまで全く知らなかったが、免疫チェックポイント治療 (ICI) は太り気味で BMI が25以上のヒトの方が効果が出やすいという論文がいくつか発表されている(例:Lancet Oncology Vol19, 310, 2018)。例えば太った人の方がガンになりやすい、あるいは大腸ガンは食生活が西欧化することでリスクが高まる、などの現象から考えると、大変意外な話だ。
この研究では、様々な食事のタイプを再現した餌をわざわざ作成して、その餌を食べさせたマウスのチェックポイント治療に対する反応を調べ、何故肥満の人の方が ICI に反応しやすいのか検討したおもしろい研究で、7月8日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Diet–microbiome synergy underlies obesity-associated immunotherapy efficacy(食と細菌叢のシナジーが肥満の人が免疫治療に反応しやすい背景にある)」だ。
この研究の圧巻は、肉、魚、豆由来のタンパク質、様々な炭水化物、様々な植物性及び動物性油、そして様々な食物繊維を配合して、地中海食、日本食、ビーガン、アメリカ食、高脂肪食、ケトン食などを再現し、これを食べさせたマウスをわざわざ作成している点だ。これまで、単純に高脂肪食と言った簡単なレシピで済ませていたのを、ここまで徹底しているのが売りになる。
結果は期待通りで、高脂肪食だけでなく、アメリカ食、西欧食などは体重が増加する。意外なことに地中海食もアメリカ食並みに肥満を誘導する。一方、我が日本食は最も体重増加が少ない。これに相応して、腸内細菌叢も食事のタイプごとに大きく違う。この中から、良い代謝スコアや悪い代謝スコアと相関するバクテリアと特定することができる。これも少し意外だったが、乳酸菌は悪いスコアと相関している。
そして、これらの異なるタイプの食を続けたマウスにガンを注射して ICI の効果を比べるメインの実験が行われ、衝撃の結果になっている。まず我が日本食を食べたマウスでは ICI が全く効かない。これは体重は増加する地中海食でも同じだ。一方、アメリカ食マウス、イヌリンが多く含む食を食べたマウスは、ICI がよく効いてガンの増殖を抑える。日本で開発された ICI が日本食と合わないというのは皮肉だ。
ただ、肥満を起こしやすい地中海食と日本食ともに ICI が効きにくい、あるいは西欧食とアメリカ食では友にメタボスコアは悪いが、アメリカ食の方が圧倒的に ICI の効果があることから、実際には、単純な代謝レベルではなく、細菌叢とそれを支える食成分が ICI の効果を決める最大の要因であると考え、ICI の効果と相関する細菌叢を探索している。
ここからは結構単純で、最終的にサプリでも使われている L.johsonii の一種類に焦点を当てている。そして高脂肪食やアメリカ食は L.johnsonii が腸内で生存しやすい環境を作るとともに、ICI を増強する様々な分子の原料を L.johnsonii に提供することで、ICI 効果を高めるシナジーカイロを形成することを示している。実際には、ICI 増強効果に関わるメインの代謝物は、脱アミノチロシン DAT と、インドール3乳酸と特定され、DAT は試験管内のキラーT細胞のガン障害活性を増強することまで示している。
以上が結果で、我々日本人にとっては少しショッキングな結果で、アメリカ食も捨てたものではないという話だが、その結果代謝バランスを変化させるのはリスクが多いので、ICI を受けるとなって急にハンバーガーを食べ始めるというのはないと思う。その意味では、DAT やインドール3乳酸などの効果をさらに突き詰めて、代謝バランスを壊さない ICI 食を開発してほしい。
