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7月13日 シナプス剪定に抗体が関与している(7月9日号Science掲載論文)

2026年7月13日
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2020年、ミクログリアが分泌する補体第一成分C1qがシナプス剪定に関わることを示した論文を紹介した(https://aasj.jp/news/watch/12355)。さらにはC1qはエンドゾームに取り込まれて細胞内でリボゾームの相分離を誘導して翻訳に影響するという突拍子もない論文も発表されている(https://aasj.jp/news/watch/24795)。

このように脳神経回路でのC1qに注目すると突拍子もない話が出てくるようだが、今日紹介するUniversity College Londonからの論文も、今度はC1q依存性のシナプス剪定に抗原特異的な抗体が関わるという、やはり突拍子もない研究で、7月9日Scienceに掲載された。タイトルはズバリ「C1q and immunoglobulins mediate activity-dependent synapse loss in the adult brain(C1qと免疫グロブリンは成人の脳での神経活動依存性シナプス剪定に関わる)」だ。

この研究では正常マウスだけでなく、アルツハイマー病モデルについても実験を行っているが、ややこしくなるので割愛して、正常マウスのみに絞って紹介する。まず、光遺伝学的方法で海馬神経を刺激したあとの組織を詳しく検討している。刺激に応じて神経が投射している側のシナプスだけで、神経活動を示すFosの発現が見られるとともに、同じ場所にC1qが蓄積することを確認する。即ち、神経活動依存的にシナプスにC1qが集まる。その結果VGLUT2神経のシナプスだけが剪定される。VGLUT1が全く影響を受けないことがミソで、この剪定によりVGLUT1優位のシナプスが維持される。ただ、その生理学的結果については全く調べられていない。

この研究では、神経活動依存的にC1qがVGLUT2シナプスに集まるメカニズムに焦点を当てて調べており、VISUM等のノンバイアス空間トランスクリプトームを用いて、免疫グロブリンを発現するB細胞が刺激に応じて海馬にリクルートされていることを発見する。刺激を受けていない反対側では全くこのような現象は起こらない。

ラベル実験から、B細胞は頭蓋骨髄から硬膜を通って、刺激依存的に海馬に移動してくること、おそらくCXCL12ケモカインが刺激依存的に働いてB細胞の移動を誘導するのではと結論しているが、はっきりとした証拠は示されていない。

こんなことがあるのかと疑うが、IgMをノックアウトしたマウス、IgMが分泌できないマウスを用いて、B細胞からIgMの分泌がないと、C1qのシナプスへの集合はなく、シナプス剪定もないことが示される。即ち、刺激依存的にB細胞が活動している神経の近くで、IgMを分泌することがC1qの特異的集合に必須であることを示している。

さらに驚くのは、卵白アルブミンに対する抗体だけを分泌するマウスでは、刺激依存的なC1qの集合、そしてシナプス剪定は起こらない。ただ、この実験では卵白アルブミンB細胞が海馬に移動するかどうかは調べていない。これは大きな手落ちで、神経活動依存性がB細胞の移動なのかどうかを知る意味で決定的に重要な実験だと思う。いずれにせよ、IgMだったらいいわけではないので、抗原特性があることになる。

結果は以上で、C1qがミクログリアから神経刺激依存性に分泌されるだけでなく、C1qをVGLUT2神経へ集合させるために、B細胞の神経刺激依存的移動と、一定の特異性を持ったIgMの分泌が必要であるという結論になる。とすると、IgMがどの抗原を認識しているのか調べてほしかったと思う。

このようにフラストレーションは残るが、本当なら免疫学的にも極めて不思議な現象で、今のところはまだ完全に信じられない。

  1. okazaki yoshihisa より:

    刺激依存的にB細胞が活動している神経の近くで、IgMを分泌することがC1qの特異的集合に必須であることを示している。
    imp.
    B細胞と抗体が必要とは、、、
    まだまだ、謎はつきません。

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