実は昨日起床して隣の部屋に行くとき失神し、肋骨を骨折してしまいました。最初脱水による立ちくらみかと思っていたのですが、病院で血圧が高く、130を超す洞性頻脈があることを指摘され、心房細動による血圧低下が原因ではと、一晩病院に泊まり様子を見ました。たまたま炎症再生委学会で講演をする予定だったので、会長の椛島先生にお願いして病院からzoomで講演をしたのですが、初めて10分ぐらいで頻脈が見事に治ってしまいました。結局ホルター心電図を装着して退院する前にこの記事を書いています。肋骨骨折はCTでははっきりわからないのですが3本ほどカクカク言うので、間違いはないと思います。こちらの痛みの方がやっかいそうです。とは言え、今日もおもしろい論文を紹介することが出来ました。
真核生物と原核生物を比べた時、イントロンの存在は真核生物の特徴の一つだ。そして、遺伝子がイントロンを含む場合、必ずスプライシングによって、翻訳される遺伝子を作る必要がある。このようなイントロンやスプライシングの進化を考える時、イントロンのない原核生物を形成して、イントロンの意義を調べるのは一つの方法といえる。
今日紹介する中国科学アカデミー上海生化学細胞生物学研究所からの論文は、イントロンは真核生物にとって必要かという素朴な疑問を、全てのイントロンを出芽酵母ゲノムから取り除くのに成功し、イントロンなしでも真核生物は生きていることを証明した論文で、7月23日Cellにオンライン掲載された。タイトルは「A spliceosome-independent eukaryote generated by complete intron removal(スプライソゾームの必要ない真核生物をイントロンを完全に除くことで作ることに成功した9)だ。
出芽酵母には300のイントロンが存在し、これらを一つ一つ欠損させるとすると、10年以上の月日がかかるらしい。そこで、ランダムにイントロンを導入した後、二つの染色体を持った酵母内での減数分裂時の組み替えでイントロンの除去数を増やす方法で、最終的に完全にイントロンが存在しないSYNE27の作成に成功する。それまでの中間段階の解析もおもしろいが、全て割愛してSYNE27について説明する。
スプライシングが必要無くなってさぞかし楽になったかと思いきや、イントロンが減るにつれて増殖力は低下していく。しかし、SYNE27を正常のゲノムとディプロイドにしても細胞増殖は低下しないことから、増殖にネガティブに働く要因が存在するわけではない。
増殖が低下する原因を調べると、リボゾームの合成に関わる様々なリボゾームタンパク質の合成が低下し、翻訳活性が低下することが、最大の要因であることがわかった。このことは、イントロンの獲得と、スプライシングシステムが進化的に染色体を持つ真核生物の適応性を高めることを意味する。その意味で、イントロンの全く存在しないSYNE27をスタートラインにして、イントロンの新たな獲得の意義を調べる新しい研究が可能になる。
イントロンを全部は除去しても、スプライシングに必要な遺伝子は全て残っている。しかし、SYNE27からスプライシングに関わる様々な分子を除去しても、SYNE27は増殖を続ける。即ち、スプライシング分子は、スプライシング以外の他の機能を保っているかもしれないが必須ではない。おもしろいのは、イントロンが存在しないSYNE27でも、配列の中からスプライスシグナルを探し出して遺伝子の一部を除去する反応が低い確率であるが見られる。これはイントロンのある酵母では見られない反応なので、本来のスプライシング標的がなくなったときに現れるが、原始的なスプライシング酵素がどのようなmRNA調節を担っていたのかを知るための重要なヒントになるかもしれない。
以上が主な結果で、最後に書いてあるが4年という月日を費やしてイントロンが全く存在しない出芽酵母を作成したことは、本当に素晴らしいチャレンジだと思う。さらにこの過程で、様々なレベルでイントロンが除去されて中間段階の酵母が樹立され、またSYNE27ではスプライシングに必要な分子を全て除去する株の確率にも成功している。これらの材料は、スプライシングの進化を考える上で必須のツールになる。これまで、遺伝子の中に飛び込んだselfish DNAがイントロンの起原と考えられているが、この研究で自己的DNAがホストに取り込まれて、安定な遺伝子制御に使われた可能性が示唆されている。一つの合成生物学の道筋がついた気がする。
