試験管ベイビーと呼ばれた体外受精を初めて成功させたのは、英国のロバートブラウンで、2010年にはノーベル賞が授与された。我が国では体外受精児は全出産の8%に上り、先進国では10%近くに上る国もあることから、様々な批判はあったがノーベル賞は当然と言っていいかもしれない。ただ、その後の生殖補助技術の著しい発展で、実際にクリニックで行われている治療は極めて複雑になっている。例えば受精率を上げるために、精子を卵子に注入する顕微授精が行われる率はかなり高いと思われる。しかし、京都大学の金津-篠原さんはマウスを用いて顕微授精が遺伝可能な変異を誘導し、孫の世代の発生異常を上昇させることを示して、警告を発している。
今日紹介する中国・南京大学からの論文は、両親と子供の全ゲノムを解析して、子供だけに新たに発生する変異を調べるコホート研究を行い、遺伝可能な生殖細胞系列の変異の要因を探った研究で8月7日Nature Medicineに掲載された。タイトルは「Large-scale whole-genome sequencing reveals the landscape and health implications of de novo mutations(大規模全ゲノム解読は子供のde novo変異の状況と健康への影響を明らかにした)」だ。
要するに両親と子供の血液を用いて30カバレージ程度の全ゲノム解析を行い、子供でだけ発生した突然変異を、父親の精子が作られる過程で発生した変異、母親の卵子で作られた変異、そして胎児発生過程で発生した変異に分類している。胎児発生過程で起こったと決めるのは簡単ではないが、変異率が0.35を下回った場合、即ちキメラが生じた場合を胎児発生過程の変異と見なしている。
De novoの変異(DNM)は、圧倒的に父親の精子形成過程で発生することが多い。次に、母親から、そして胎児発生過程での変異になる。当然のことながら、父親の年齢に応じてDNMが増える。ところが母親の場合は、年齢の影響は父親ほどではない。唯一時間とともに増える変異は、デアミナーゼによる変異の蓄積で、極めて特徴的な変異の出方でわかる。
この研究のハイライトは、7851人のコホートの中に2232人の生殖補助医療で生まれた子供が含まれている点で、親の年齢などの影響に加えて、生殖補助医療自体が変異を発生させるかについて調べることができる。
結果だが、生殖補助医療で誕生した子供ではDNMの数は優位に増加している。ただ、生殖補助医療で使われる様々な技術との相関を調べると、生殖補助医療自体が大きな原因になっているわけではなく、男性側の染色体でのDNMは顕微授精が最も大きな要因になっている。また、母親側では排卵誘発処置、特に卵胞刺激ホルモンのアゴニスト法を用いたケースで、変異の率が上昇している。
これら以上に変異を誘発するのが、胚を培養した後着床させる方法で、凍結卵を胚盤胞まで発生させて着床させた場合が最も多くの変異が入る。ここで見られる変異は、培養により酸化ストレスがかかったことによるたいぷの変異であることも確認している。
これらの変異が子供の異常につながるかも検討しており、顕微授精やアゴニスト法は強く発生異常を誘導するわけではない。ただ、早産や低体重児とは明確な相関がある。一方で、胎児培養を行った後着床させた場合は、神経系の発生異常が起こる確率が上がることも示している。
結果は以上で、体外受精自体が問題ではなく、その後妊娠率を上げるために開発された様々な方法が、異なるメカニズムで変異を誘導することがわかる。今後は金津さんたちがマウスで調べたように、孫の世代がどうなるのかを追跡することは重要だろう。

顕微授精やアゴニスト法は強く発生異常を誘導するわけではない。
早産や低体重児とは明確な相関がある。
胎児培養を行った後着床させた場合は、神経系の発生異常が起こる確率が上がる。
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体外受精自体が問題ではなく、その後妊娠率を上げるために開発された様々な方法が問題!