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9月25日 K-Ras阻害剤とデザインIL-21で膵臓ガンの根治を目指す(9月23日Cellオンライン掲載論文)

2026年9月25日
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薬剤開発が不可能とまで考えられた変異K-rasに対する薬剤の開発が続いている。アムジェンのK-ras G12C特異的な共有結合型阻害剤sotorasibを皮切りに、Revolution Medicinesの開発したほとんどのRas変異を阻害するdaraxonrasibがFDAにより認可されている。我が国でも、G12D変異Rasを分解してしまうsetidegrasibがアステラス製薬により開発され、肺がんで第3相の治験が始まっている。このように、あっという間に多くのRas阻害剤が利用できるようなり、また目覚ましいがん抑制効果が証明されているが、問題はRas阻害剤単独では必ず耐性が発生することだ。

この問題を解決する方法の一つとして期待されているのが、免疫チェックポイント治療など免疫治療との併用で、Ras阻害剤でガンを殺し、そこで発生するがん特異的な抗原に対する免疫を誘導し、薬剤に対する耐性ガンの出現を抑え込む方法だ。今日紹介するハーバード大学からの論文は、膵臓がんモデルでRas阻害剤と併用する免疫方法を探索し、タンパク質デザインの大御所David Bakerさんたちが開発した、IL-21活性を持つデザインペプチドが最も高い併用効果があることを示した面白い論文で、9月23日Cellにオンライン掲載された。タイトルは「CD4 T cells convert transient responses to KRAS inhibition to durable remissions in pancreatic cancer(CD4T細胞はKRAS阻害による膵臓ガンへの一時的効果を持続的に変える)」だ。

IL-21はT, NK, B細胞やマクロファージ、樹状細胞を刺激できるインターロイキンで、IL-21受容体はIL-2と共通のcommon γ受容体と重合体を形成し独自のシグナルを生成する。このグループはIL-21について研究を続けており、その一環として、David Bakerさんと共同で、マウスとヒトのIL-21Rを刺激できるデザインペプチド21h10を報告していた。そして今最も注目されているRas阻害剤と免疫治療の組み合わせに使えないか、膵臓ガンを移植したマウスで調べている。これまで示されてきたように、Ras阻害剤はチェックポイント阻害の組み合わせや、自然免疫の活性化を加えると生存が伸びる。またBakerさんたちがデザインしたIL-2/IL-15活性を持つペプチドでも同じように生存期間が延びるが、効果は限定的だ。これに対し21h10を同時に注射すると、8割以上で完全に腫瘍が消失し、100日以上生存する。IL-2/IL-15ペプチドの効果が限られていることからcommonγシグナルだけではなく、IL-21受容体とcommonγによるシグナルがこの効果に必要であることがわかる。移植モデルだけではなく、変異Rasとp53欠失を組み合わせた自然発ガンマウスでも、また肺ガンマウスでも同じように効果が得られる。

この効果のメカニズムを探るべく、膵臓にガンを移植しRas阻害剤+21h10の組み合わせでガンに浸潤してくる細胞を探索している。IL-2と同じでIL-21も全身投与すると膵臓炎など強い副作用が出るので、これを抑えるための抗TNF抗体も組み合わせている。これだけ高い効果が得られるのでおそらくキラー細胞が活性化されているのかと思いきや、なんと活性化されたCD4が増加していることを発見する。同じCD4でも制御性T細胞は低下している。Single cellレベルで増殖しているCD4細胞を調べると、インターフェロンγを発現するTh1型のCD4細胞が増殖していることもわかった。

抗体や遺伝子ノックアウトマウスを用いて、21h10の効果の原因細胞を調べると、CD8細胞やDC1樹状細胞は必要無く、Th1 CD4T細胞と免疫を誘導するDC2樹状細胞がこの効果に必須であること、そしてこの活性にはクラスI MHCを介する直接的ガン細胞障害は必要無いこともわかった。詳細は割愛するが、Ras阻害剤で一過性に傷害されたガン細胞がDC2に取り込まれTh1 CD4T細胞を活性化し、分泌されるインターフェロンにより炎症及びガン細胞のマクロファージによる貪食が高まり、ガンが消滅することを示している。

結果は以上で、最後のインターフェロンはマクロファージの貪食を活性化してガンを殺すという点については、本当にそれだけでこれほどの効果が得られるのか疑問に思う。またこの効果がデザインペプチドでしか得られないのか、IL-21でもいいのかも是非知りたいところだ。一方で、この研究もCD4T細胞が直接的ガン細胞障害を越える作用を持つことを証明しており、今後のがん免疫療法を考える上で重要だと思う。おそらく人間の場合全身投与は問題があると思うので、21h10にさらに細工が必要だと思うが、是非膵臓ガンの根治を目指す治療法開発へと発展してほしい。

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