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4月17日:マウンテンゴリラの危機(4月10日号Science掲載論文)

2015年4月17日
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新しい京大総長山極さんの入学式・式辞の評判がいい。私も京大のHPに掲載されている文章を読んだが、何よりも権力と経済のにおいがしないのがいい。とはいえ21世紀を作る人材を育てたいという初々しい気持ちが伝わってくる。1月にある会合で会う機会があったが、その時の印象を再確認した。この爽やかな姿勢はおそらく山極さんが科学の対象として野生のゴリラを見続けながら、その生の悲哀を感じる感性を持っているからではないだろうか。しかし私たちはその野生のゴリラを失うかもしれない。今日紹介する英国を中心とする国際チームの論文は、アフリカに生息するマウンテンゴリラのゲノム解析で4月10日号のScienceに掲載された。タイトルは「Mountain gorilla genomes reveal the impact of long-term population decline and inbreeding (マウンテンゴリラのゲノムからゴリラが近親交配により長期にわたって数を減らし続けていることがわかる)」だ。研究ではウガンダからガボンの各地域で生息しているゴリラ13頭の全ゲノムを調べ、各地域の集団の関係、それぞれの集団の進化過程と集団数の変遷、そして環境に応じた遺伝子選択などを調べている。まず最初に調べたゴリラの多様性は極めて少ない。なかでもコンゴに棲む東部ゴリラでその傾向が著しい。また、各地のゴリラの亜種では2万年以後ほとんど交雑がない。さらに近親交配が進んだため、個々のゴリラの遺伝子の3分の1はホモ(同型)で、実験動物のような状況に陥っている。この近親交配は最近になるほど著しいこともわかる。これは個体数が減少していることと一致する。全ゲノム配列を総合して計算すると、東部のゴリラは西部のゴリラと約15万年前に分離を始め、2万年ぐらいまで交流があったようだが、今は全くなくなった。その結果、さらに近親交配が進んできたことがわかる。それに輪をかけて、氷河期などの気候変動にさらされ個体数が急速に低下した結果、ゲノムから見るとゴリラは間違いなく絶滅への道をひた走っているという悲しい結果だ。強そうに見えても危機にさらされている。この結果だけを見ると、人類の影響は少ないように見えるが、現在個体数が800にまで減少し、生息域も限られていることから考えると、ゴリラの絶滅への道に人類が大きく寄与していることは間違いない。少し議論が飛躍するかもしれないが、私には教師も学生も多様性が失われつつある我が国の大学も近親交配が進んだ絶滅危惧種に思える。その意味で、ゴリラを見続けてきた山極さんのWIDOW構想への期待は大きい。

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