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10月19日:恐竜の体温を測る(10月13日号Nature Communications掲載論文)

2015年10月19日
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恐竜は爬虫類だから変温動物という考えは20世紀終わりぐらいより徐々に変わってきて、少なくとも一部の恐竜が私たちと同じように温度を維持する機構を有していたことが定説になりつつある。5月16日紹介したように魚ですら筋肉を熱の生成に使っていることを考えると(http://aasj.jp/news/watch/3435)恐竜も筋肉を熱生成に使ったのではないかと思うが、他にも面白い可能性があるだろう。ロンドンの自然史博物館を見てまわっていたとき、子供に人気の恐竜の化石展示室に、大型草食恐竜は消化管の発酵熱を使っているとする説明を見たとき、様々な方法があるのだと感心したことを覚えている。ただ、実際の体温が何度ぐらいだったか測定するわけにはいかない。今日紹介するUCLAからの論文は恐竜の卵の殻に含まれるアイソトープを使って体温を推定した研究で10月13日発行のNature Communicationsに掲載されている。タイトルは「Isotopic ordering in eggshells reflects body temperatures and suggests differing thermophysiology in two cretaceouss dinosaurs(卵の殻のアイソトープの量から推定される体温は白亜紀恐竜の体温の違いを示唆する)」だ。最近アイソトープの測定技術が進み、化石から食事や代謝状態を推定することが可能になっているが、この研究では卵の殻に含まれる炭素と酸素のアイソトープの量から、卵の殻が生成された温度を割りだしている。この方法はmultiply-substituted methodと呼ばれ、熱力学的平衡状態で取り込まれるアイソトープの量から当時の温度を調べる方法だ。都合のいいことに卵の殻は炭酸カルシウムで測定に使える炭素と酸素を固定している。従って、恐竜の体内温度を反映する卵管内で殻が形成されるとき固定されたこれらのアイソトープ量を調べると、殻が形成されたときの温度が推定できるという原理だ。実際、現存の鳥や爬虫類の卵をこの方法で分析すると、体温との直線的相関を取ることができる。これを確かめた上で、モンゴルから出土したオビラプトル(鳥の祖先と考えられている)とアルゼンチンから出土した巨大草食恐竜ティタノザウルスの卵の殻のアイソトープ量から体温を推定している。もちろん、出土した卵の殻に含まれる炭酸カルシウムが当時形成されたものであることを注意深く検討し、測定結果が当時の恐竜の体温を反映している可能性が高いことを詳しく示している。結果だが、オビラプトルの体温は31.9±2.9度、保存のいい化石から計算したティタノザウルスの体温は37.6±1.9度、保存状態がはっきりしない卵から計算したティタノザウルスの体温は39.6±1.4度と推定している。いずれも当時の気温より高いことから、どちらの恐竜も恒温動物だったことがわかる。ただ体温の高い現存の鳥類に近いオビラプトルが31度程度であることから、鳥類と異なる熱生成調節機構を持っている中間段階の生物だと結論している。また大型恐竜の体温が高いのは、表面積が小さいため熱の発散が抑えられていることもその原因だろうとしている。ここでは消化管内発酵については何も述べていないが、草食だからこれもありかなと思う。いつになっても、恐竜への夢は尽きないようだ。

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