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1月15日:筋肉幹細胞の維持とオートファジー(1月7日号Nature掲載論文)

2016年1月15日
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  オートファジーは現在東工大におられる大隅さんたちが発見された現象で、古くなったたんぱく質、オルガネラなどを凝集させ、リソゾームで溶かしてしまう一連の過程を指し、酵母から人間まで進化的に保存されている細胞の基本的メカニズムだ。論文を見ていると、多くの病気でその関連が示されているが、最近は特にガン治療分野の研究がホットな印象がある。今日紹介するバルセロナ・ポンペウ・ファルバ大学からの論文は、幹細胞の老化を防いでいるのがこのオートファジーであることを示す研究で1月7日号のNatureに掲載されている。タイトルは「Autophagy maintains stemness by preventing senescence(オートファジーは老化を防いで幹細胞性を維持している)」だ。
  もともとこのグループは静止期にある筋肉幹細胞ではオートファジーが盛んに進んでいることを突き止めといた。この研究では、老化に伴う急速な筋肉の減少、すなわち幹細胞の消失にオートファジーが関わっているかどうか研究している。まず老化マウスから筋肉幹細胞を取り出してオートファジー活性を調べると、予想通り低下している。そこでオートファジーを高める遺伝子を幹細胞に過剰発現させると、老化による幹細胞活性低下を防げることを突き止めた。すなわち、オートファジーが幹細胞維持のための一義的な役割を演じているという結果だ。これをさらに確かめるため、同じ遺伝子を今度は若いマウスの幹細胞でノックアウトすると、1ヶ月で筋肉幹細胞が消失する。
  次に、オートファジー活性の低下による幹細胞活性低下のメカニズムを検討し、ミトコンドリアの新陳代謝がうまく進まないため、活性酸素が上昇し、細胞の老化を誘導していることを示している。この状態は、INK4aを回復することで正常化できることから、活性酸素によりINK4aが抑えられることが筋肉幹細胞の老化の主要な原因ではないかと結論している。最後に、マウスで見られたこの現象がヒトの筋肉幹細胞でも見られるかどうかを高齢者の筋肉で確かめ、オルガネラや古くなったたんぱく質の除去がうまく進んでいないことを示している。
  これらの結果は、オートファジーの低下が老化による結果ではなく、筋肉細胞の老化を防ぐ主要なメカニズムであることを意味するが、もしこれが正しければ、オートファジーを増強し、INK4aの転写を活性化できる薬剤は老化を防止できることになる。実際、この研究では細胞内の酸化還元状態に作用するラパマイシンやトロロックスで筋肉幹細胞活性を回復させられることを示しており、老化による筋肉の消失もいつか防げるのではと期待をもたせて終わっている。
 一見すると納得する論文だが、オートファジーがあまりにも基本的な細胞メカニズムであることを考えると、要するに新陳代謝が悪いと老化すると言っているのにすぎない気もする。一方、今薬剤耐性のガンを殺すためオートファジー阻害剤を使おうとする試みが進んでいるが、副作用として正常幹細胞の消失は覚悟する必要があることも理解できた。

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