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1月19日:貧困と脳発達(American Journal of Psychiatryオンライン版掲載論文)

2016年1月19日
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昨年4月10日、貧困が子どもの脳構造の発達を障害することを示したコロンビア大学からの論文を紹介した。この時調べられていたのが脳構造、特に皮質の厚さだった。今日紹介する論文も、やはり貧困の脳発達に及ぼす影響を調べているが、脳内の神経連結について調べた研究で、American Journal of Psychiatryに掲載された。タイトルは「Effect of hippocampal and amygdala connectivety on the relationship between preschool poverty and school age depression (海馬と扁桃体の結合性が就学前の貧困と学童期のうつとの関係に与える影響)」だ。この研究では学童のうつ病を調べるためのコホート研究で追跡中の児童105人の経済状態、うつ病の既往、現在の精神状態、そしてMRI検査を行い、脳の連結性の発達とうつ病、貧困との関わりを調べている。経済状態だが、アメリカで貧困と認定される所得レベルの何倍の収入があるかを指標に調べている。ほとんどの親は、大学を出ているが、対象となった子どもの中には、ほとんど収入がない家庭の子供が多く含まれている。全体で貧困家庭と言えるレベルは15%を超えているが、これはほぼアメリカの平均に近い。研究では、105人のMRI検査を行い、安静時の脳各部位の結合性を調べた後、経済状態と相関する領域をまずリストしている。様々な領域間の結合が低下しており、貧困が脳構造の発達に大きな影響を及ぼすことがよくわかる。次に、これらの領域結合度と経済状態をプロットして、影響を図示している。以前紹介した論文と比べても、この方法で調べるとより経済状態と脳発達の高い相関が検出されている。さらに、海馬と扁桃体の結合性(従って経済状態)は、学童期でのうつ状態と強く相関している。結果はこれだけだが、貧困と、脳の構造的発達、その結果としての感情の生涯の関係が前にもましてはっきりした結果だと思う。貧困問題の解決の最も重要な柱は教育だ。とすると、児童の機会平等をなんとか実現する政策が必要だ。わが国でも、児童の貧困は拡大している。すなわち、貧困が再生産される構造が出来上がりつつある。ここを断ち切れないと、あっという間にわが国は格差社会に突入するだろう。わが国児童の調査を是非知りたいと熱望している。

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