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1月21日:脂肪酸アミド加水分解酵素と幸せ気分(Journal of Happiness Studiesオンライン版掲載論文他)

2016年1月21日
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  論文に目を通していると、世の中には様々な雑誌があるのに驚く。今日紹介する論文が掲載されているJournal of Happiness Studiesもその一つだろう。幸せについての専門誌があるということは、研究している人が十分な数いるということだ。出版社もSpringerと大手なので、シャレではあるまい。この雑誌のオンライン版に、香港とブルガリアというこれも珍しい取り合わせの共同研究が掲載されていた。タイトルは「A genetic component to national differentce in happinesss(幸せ感の国別の違いに関わる遺伝要素)」だ。
  この研究はWorld Value Survey調査で調べられた「今とても幸せ」と思っている人の割合と、不安や幸せ感と関わる脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)遺伝子の一つの一塩基多型(SNP)の割合をプロットしただけの研究だが、結果は興味深い。まず、大まかに幸せと思っている人の割合と、FAAHの多型は正の相関を示す。例えば、我が国を見ると幸せと思っている人が3割で、このSNPは2割。一方、香港や中国では幸せと思っている人は15%、このSNPは10%ぐらいだ。アメリカは幸せと思う人の割合が40%近いが、このSNPは30%となる。他にも、この多型の割合は低くとも、幸せの国タイで幸せと思っている人は多い。間違いなく相関はありそうだが、風と桶屋の話に近く、話の種にはなっても、これ以上追求しにくい。
  できればブータンも調べて欲しいな、などと思っていたら、フランスで行われたこのFAAH阻害剤の臨床治験で大変なことが起こってしまった。1月18日号のNatureに掲載されたNews記事で、フランスで行われたFAAH阻害剤の第1相治験の際、最も高い量の薬剤を服用した健常人6人が病院に運ばれ、そのうち1人が亡くなったというニュースだ。安全性を確認する第1相で死者が出るのは大変なことだ。ポルトガルのベンチャー企業の開発した薬だが、第1相試験のやり方そのものが間違っているのではないかと注目が集まっている。FAAHは内因性のカンナビノイドを分解する酵素で、これを阻害すると不安や運動障害がなくなることを期待して薬剤の開発が続いているが、残念ながらまだ市場に出た薬剤はない。しかし、幸せを薬で取り戻そうとするのはやはりやめたほうがよさそうだ。

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