この研究では1997年から1998年にカナダケベック州で生まれた子供を追跡し、13、15歳時点でいじめにあッた経験を調査するとともに、自殺を考えたか、また実際に自殺を計ったかについて調べている。数字を見ると驚くのは、いじめとは無関係に全体で4.5%,5.9%が13、15歳時点で自殺を考えたことがあり、実際にそれぞれ2.4,2.8%が自殺を計ったことがあることだ。残念ながら、わが国の自殺者の統計は見つかったが、自殺を計ったかどうかの聞き取り調査の統計を見つけることができないので、これが多いかどうか判断できないが、先進国一般の傾向だとすると驚くほど多いと思う。さらに仲間のいじめに遭った児童では、自殺を考えた比率がなんと21.0%,14.7%と驚くべき数に上り、実際に自殺を図った%も5%を上る。この統計が教えるのは、学童が自殺を考えたことがあるかどうかを聞き取り調査することの重要性だ。ぜひわが国でも同じ調査をいじめ対策に活かせればと思った。
もう一編は米国Drexel University School of Public Healthからの論文で、親のうつ病歴と子供の成績の相関を調べた研究で2月3日号の JAMA Psychiatryに掲載されている。タイトルはAssociation of Parental Depression with Child School Performance at Age 16 Years in Sweden (スウェーデンでの16歳児の成績と親のうつ病との関係)」だ。この研究では112万人のスウェーデンの学童の成績を追跡し、両親のうつ病経験と相関を調べており、結果は予想通りで、両親のいずれかがうつ病になった経験のある家庭の児童は学業成績が悪いという結果だ。重要なのは、子供が生まれる前にうつ病にかかってもその影響が16歳児の成績に及ぶ点で、家庭生活への影響の大きさを物語っている。他にも学童期に母親がうつ病になった場合、女児が男児より盈虚を受けることも明らかになった。一方男親がうつ病になった場合はこの様な差が出ない。スウェーデンの様な家庭内で男女平等が進んでいる国でも、やはり母親と父親の家庭内での役割の違いを示す興味深い統計だと思う。
我が国でも社員のうつ病は企業にとって重要な問題になっている。しかし最も影響を受けるのは家庭だ。子供への影響をできるだけ軽減するキメの細かいケアが必要だ。少子高齢化社会、健康な子供の育成にやらなければならないことは山積みで、ここに重点投資しない限り、我が国は衰退する様に思う。