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3月9日:ジカ熱感染は明確に胎児発生異常を引き起こす(3月7日The New England Journal of Medicine掲載論文)

2016年3月9日
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   2月3日にジカ熱について緊急に発表された総説をこのホームページで紹介して、病気自体はほとんど風邪程度で終わるが、現在流行している南米で小頭症が増加しており、妊婦の感染による胎児の発生異常が懸念されていることを述べた(http://aasj.jp/news/watch/4806)。この中で、ジカ熱が胎児発生異常の原因かどうかを医学的に確認するのは時間がかかると感想を述べたが、実際にはジカウイルスが確かに胎児発生異常の原因であることを証明するため着々と研究が進み、3月に入って論文が発表され始めた。
   我が国メディアはiPSと関連すれば騒ぐ傾向があり、もっぱらCell Stem Cell6月号に発行される予定の、iPSから誘導した神経細胞にジカウイルスが感染し、感染細胞が死ぬことを示した論文を紹介しているようだ(http://www.cell.com/cell-stem-cell/abstract/S1934-5909%2816%2900106-5)。ただ、この研究から妊娠時の感染により発生異常が起こるとは結論できない。今日紹介する論文はUCLAを中心に行われた、ジカウイルス感染を確認した妊婦を追跡調査したコホート研究で、ジカウイルス感染により胎児発生異常が起こることを初めて医学的に証明した研究と言える。タイトルは「Zika virus infection in pregnant women in Rio de Janeiro-Preliminary report (リオデジャネイロの妊婦さんのジカウイルス感染—予備報告)」で、3月7日号のThe New England Journal of Medicineに発表された。
  この研究は昨年9月から本年2月の間にジカウイルスに感染、ジカ熱を発症したことが確認された妊娠5−38週妊婦72人の胎児の発達状態を超音波検査などで追跡した研究だ。ジカ熱発症については典型的な紅斑が出たかどうかで判断し、ジカウイルス感染は血液や尿中のジカウイルスをPCR検査で確認している。 結果をまとめると次ようになる。 1) 2例が妊娠3ヶ月前に流産。2例が30週後に死産
2) 42例で超音波検査が許諾され、12例(29%)に様々な異常が検出された。
3) 具体的な異常:子宮内での成長の遅れ(5例)、小頭症(4例)、脳内石灰化(4例)、血流異常(4例)、羊水量低下(2例)
4) 経過観察中に超音波診断で異常が見つかっていた6例出産。2例は死産(超音波検査ではいずれも正常)。1例は胎盤不全により帝王切開で出産、大脳萎縮と黄斑萎縮。1例は小頭症。2例は羊水量低下などによる早産、いずれも新生児集中治療。
5)  超音波診断陰性児2例は正常出産。
   この研究ではっきりしたのは、ジカ熱を発症した妊婦の胎児は高率に発生異常を示すこと、小頭症など脳の発達異常の確率が高いこと、胎児脳の異常が見つからなくとも、胎盤の発達異常や血流障害などで、正常分娩ができないケースが高率にあること、超音波診断上の異常は出産後確認できること(すなわち超音波診断は正確)を示している。これはまだ予備レポートで、今後追跡中の全例の出産が終わり、詳しい結果が出ると思われる。ただそれを待たなくとも、ジカウイルスが発生異常を引き起こすという因果性が明確になり、事態は深刻であることがはっきりした。メカニズムはともかく、妊婦がジカ熱にかかることを全力で予防せよと訴える切迫感のある論文だと思う。

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