Yahoo個人に紹介した論文と比べるとまだまだ大したことはないが、今日紹介するハーバード大学からの論文もにわかには信じがたいし、読んだ後もなぜそうなるか理解できなかった。タイトルは「Oncogenic role of fusion-circRNAs derived from cancer-associated chromosomal translocations (ガンに伴う染色体転座からできる環状融合RNA は発がんに寄与している)」だ。
DNAは転写された後すぐイントロン部分がスプライシングにより除かれる。この除去されたRNAの断端がたまたま融合すると環状RNAとして細胞内に停留することが知られていた。特に最近、このプロセスが偶然の産物ではなく、様々な機能を持っていることも示されている。
おそらくこの著者らは、染色体転座が起こって、正常にはない転写物ができる時も環状RNAが生成されるのか興味を持ったのだろう。染色体転座ががんの引き金になっている白血病や小児癌で、転座により2つの違った遺伝子が融合した部位が転写される時、この環状RNAができるかまず調べ、調べた全ての染色体転座から環状RNAができていることを発見する。
では、こうして出来た環状RNAには機能があるのか、線維芽細胞へ導入して調べると、PML/RAR及びMLL/AF9転座から生成された環状RNAは細胞増殖を促進する。また、同じ環状RNAを転座によるガン遺伝子とともに導入すると、ガンや白血病の発生が促進し、また出来てきたガンは薬剤に抵抗性を示すという結果を示している。
転座によるガン遺伝子に加えて、それができる過程で生まれるスプライス産物までがガン発生に関わっているとは、ちょっとキワモノの匂いがしてしまう。残念ながらメカニズムは全くわからず、融合部位がshRNAで分解されると機能が失われ、またその部位の塩基配列を変えると機能が失われることから、融合によって生まれる新しい塩基配列が重要なことはわかる。また、異なる転座部位からの環状RNAは異なる遺伝子の活動を誘導しているようで、ここも分かりにくい。
いずれにせよ、信じられないことほど面白い。今後どう発展していくのか、期待して見ていきたい。