このように、私たちは自分の判断を基準に関わりのある人を自然に類型化して付き合いに生かしているが、心理学や医学の世界ではこの類型化をより客観的・実体的にする試みが続いてきた。
中でも性格の類型化のため現在最も用いられているのがbig five personality testで、設問への答えを分析して性格を、1)neuroticism(情緒不安定)、2)extraversion(外交的)、3)Openess to experiencee(好奇心旺盛)、4)agreeablenesss(協調的)、5)conscientiousnesss(良心的、誠実)に類型化している。
今日紹介するカリフォルニア大学・サンディエゴ校からの論文は、この類型の遺伝学的背景をGWAS(全ゲノムにわたる遺伝子型関連解析)を用いて調べた研究で12月5日Nature Geneticsにオンライン掲載された。
この研究では23&Meで遺伝子診断サービスを利用した方の性格テストおよび、もともとの性格と遺伝子多型を関連させるための研究から、白人に限って約20万人のデータを集め、性格と関連する遺伝子、同じ遺伝的要因をもつ性格と精神疾患の特定などを調べている。
まず、それぞれの類型と相関する遺伝子多型を探すと、関係してそうなSNPが幾つか見付かるが、その中で統計学的に優位に相関するSNPが良心的性格に1個、外交的性格に5個、そして情緒不安定に2個を特定している。多くはこの研究で初めて特定されたSNPだ。
実際には、これらのSNPにより周りにある遺伝子の脳での発現がどう変化するのかを調べる必要があるが、この研究では到底そこまで進んでいない。しかし、特定したSNPのうち6種類は脳での遺伝子発現に関わる可能性、さらには外交的性格のSNPの一つは、性格を決定づける強い要因を持っている可能性を示唆することは述べている。
最後に、それぞれの性格、および精神疾患を遺伝的関連性を元に主成分分析して、
1) 情緒不安定と、他の4つの性格は遺伝的に相反する性格、
2) 情緒不安定以外の4つの性格は遺伝的にも相関がある、
3) 精神疾患と性格類型は連続的に遺伝的相関を持っている、
4) 情緒不安定とうつ病は遺伝的に強く関連する、
5) 外向性と注意欠陥・多動性障害は遺伝的に強く相関する、
などを示している。
性格の類型と精神疾患が連続していることや、各類型間の関連などはなるほどと思わせる結果だが、遺伝要因で決まる性格の詳細を明確にするにはまだまだだと思う。ただ、これが理解できて初めて、教育とは何か、教育でやるべきことが明らかになる。今後全ゲノム解析を元に、研究が進むことを期待している。