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1月3日:妊娠中のオメガ3脂肪酸摂取は子供の喘息を減らす(12月29日号The New England Journal of Medicine掲載論文)

2017年1月3日
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    健康な子供が生まれ育つため、妊娠中のお母さんが何に気をつければいいのか、これを本当に調べるためにはかなり大規模で長期の調査が必要になるが、生まれた子供の喘息や湿疹などのアレルギー疾患については、果物、フルーツジュース、野菜、魚、脂身の多い魚、未精製穀物などが良い影響があり、マーガリンや塩分は悪い影響があることを示す論文が発表されている。例えば、2007年オランダのグループが妊娠中の食事が子供の喘息やアトピーに及ぼす影響を調べた2000人規模の調査では、週に4個以上のりんごを食べていたお母さんの子供は医師により診断された喘息の発症率が半分近くに低下し、魚を十分とっていたお母さんの子供は、やはり医師により確認された皮膚湿疹を持つ子供がはっきりと低下することが示されている(Thorax 62:773, 2007)。
   今日紹介するコペンハーゲン大学からの論文は、魚の代わりに魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸(EPAとDHA)を濃縮した魚油を妊娠24週から毎日飲んでもらって、子供の喘息をおさえる効果があるかどうかを調べた研究で12月29日The New England Journal of Medicineに掲載された。タイトルは「Fish oil derived fatty acid in pregnancy and wheeze and asthma in offspring(魚油由来の脂肪酸が生まれた子供の喘鳴や喘息に及ぼす影響)」だ。
   研究では736人の妊婦さんをランダムに2群に分け、片方にCRODA社のオメガ3脂肪酸サプリ(2.4gのEPA+DHA)、もう片方に同量のオリーブ油を妊娠24週から出産後1週まで摂取してもらい、生まれた子供を5年にわたって追跡し、喘鳴症状、あるいは医師により確認された喘息の発症率を調べている。
   結果は明確で、喘鳴や喘息の3歳時点での発症率は、オリーブ油群で23.7%、魚油群で16.9%だ。30%の低下を大きいと見るか、たいしたことはないと見るか意見は異なるかもしれない。しかし、あらかじめ血中のEPAとDHA濃度が低いことを確認した母親を抽出して調べると、オリーブ油群34.1%に対し魚油群では17.5%と半分に低下する。一方もともと魚を多く取っていて血中のEPA,DHAが高いお母さんでは、あまりサプリの効果はないことも示されている。したがって、メカニズムはよくわからないが、オメガ3脂肪酸を妊娠中期以降に摂取すると、子供の喘息を防ぐ効果があると結論していいだろう。
   重要なのは、もともと血中オメガ3脂肪酸が高いお母さんでは、サプリの効果がない点だ。おそらく一番いいのは、妊娠中はせっせとお魚を食べることだろう。できれば、妊娠20週ぐらいに食生活をチェックするとともに血中オメガ3脂肪酸を測定し、低いお母さんにはオメガ3脂肪酸を飲んでもらうというキメの細かい指導ができれば最高だ。
   我が国でも、テレビや新聞にトクホや機能性食品の広告が満ち溢れているが、宣伝費にお金をかけるのではなく、このぐらい長期的視点で製品をテストしていく真面目な会社が優遇される時代がくることを願う。

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