これに対し米国NIHは、健康のための意識変革には行動学と社会学の研究が必須であると考え、今年からこの分野の研究プロジェクトを立ち上げている。中でも、スマートフォンなどを用いたモバイルヘルスの重要性を認識しており、2011年から始まったMobile Health Training Instituteを増強し、研究者にモバイルツールを使った研究法のトレーニングを行っている。
マインドコントロールと紙一重という批判があるのは承知だが、私はこの批判が、人間に自由意志があるのかについて行われた終わりのない哲学論議と同じで、結局やるか、やらないか割り切るほかないと思っている。もちろん私は推進すべきだと思っている。
今日紹介するニューヨーク・マウントサイナイ病院からの論文は喘息患者さん向けのiPhoneアプリを使った喘息の実態調査についての論文でNature Biotechnologyに掲載された。タイトルは「The asthma mobile health study, a large-scale clinical observational study using ResearhKit(喘息のモバイルヘルス研究、ResearchKitを使った大規模臨床観察研究)」だ。
この論文を読んで初めて知ったのだが、アップルは。1)インフォームドコンセントを確認し、2)様々なアンケートを行い、3)健康や病気に関する様々な情報を集め、4)回答を促し、5)結果を中央に集めることを可能にする、ResearchKitと呼ばれるオープンソースのモバイルヘルスのためのアプリ制作フレームワークを提供している。このフレームワークを用いて、喘息のアプリが作成されiPhoneユーザーに提供し、この研究が始まった(残念ながら私はアンドロイドのスマートフォンなのでその内容を確かめていないことを断っておく)。
この研究ではこのアプリをダンウンロードした(おそらく)喘息患者さんかその家族を対象に1)実際にこのアプリを喘息の実態調査に使えるか、2)このアプリで可能なコホート研究の特徴、3)参加者の熱心さや、長期的関心、4)データ共有についての意識などを調べている。
研究は2015年3月アプリを提供した日から続けられており、最初の6ヶ月で4万以上のダウンロードがあり、この中でなんと8千人近くがプロジェクトに同意し、参加している。
結論的には、予想以上に多くの人が熱心に参加し、喘息の季節別、地域別の情報がリアルタイムで得られること、また発作の頻度、薬剤の使用などについても、これまでの厳密な疫学研究とほとんど同じ結果が得られることを示している。
詳細は省いて、面白い結果だけをいくつか最後にリストしておく。
1) 参加者の88%は、匿名化したデータの共有、66%は研究者へのデータ提供、さらに21%は研究のスポンサー企業への提供を同意している。
2) モバイルヘルスの場合、参加者は圧倒的に白人で、若者が多く、また男性が多い。
3) 症状が重い人ほど熱心に参加する。
4) 一般メディアでの宣伝があると、ダウンロードが高まる。
5) ピークフローなどのデータと、吸入器の使用率などを集めることも可能。
6) 患者さんへ提供する様々なデータにより、発作のコントロールがかなりの割合で可能になったという、医学的効果も表れている
などが挙げられる。
これまで、厳密な医療統計学に基づき様々な調査が行われており、それと比べるとモバイルヘルスは問題が多いことは確かだ。現に、対象の学歴、年齢、性別、人種など多くのバイアスがかかる。しかし、これを拒否するのではなく、克服する新しい推計学を確立することが正しい道だと思う。このようなフレームワークがあるなら、我が国の研究者ももっと気軽に利用すればいいと思う。21世紀の医学にコレクティブインテリジェンスは欠かせない。
面白い研究ですね。私は医療者たちは、もっと患者の意見を聞くべきだとずっと考えています。たとえば2015年に難病指定になった「好酸球菌性副鼻腔炎」などは、私の話をちゃんと聞く研究者がいれば、15年前にはわかっていたのでは…と思っています。
今回の論文では喘息患者が対象になっていますが、私も喘息患者なのですが、どうして、豪州・パースのような工業もないところでぜんそく患者が多いのか・・。私は、内陸部からの砂嵐に原因があるのでは・・などと考えたりしています。
素人考えでしょうが…。
個人のお医者さんが患者さんの言うことを聞いてもらうためのアプリではなく、あくまでも全国規模のデータを集め、患者さんに情報を返すためのアプリです。喘息以外では、パーキンソン病にできています。個人のお医者さんが患者さんの言うことを聞いてもらうためのアプリではなく、あくまでも全国規模のデータを集め、患者さんに情報を返すためのアプリです。喘息以外では、パーキンソン病にできています。