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3月25日SLEの治療標的としての細胞接着(Journal of Clinical Investigationオンライン版掲載論文)

2017年3月25日
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    免疫学をかじった人なら、ほとんどの人が自己免疫病の一つ前進性エリテマトーデス(SLE)に興味を持つた経験があるはずだ。自己免疫病の中でも、全身の臓器が影響を受けるという点では群を抜いており、また2本鎖DNAに対する抗体の存在も特徴的だ。治療の中心がステロイドであることは、私が病院で働いていた頃から変わっていないが、投与の仕方が改善され、患者さんの予後もずいぶん改善されている。しかし予後をさらに改善するためには新しい薬剤の登場が待たれており、B細胞を除去するリツキシマブなどへの期待が高まっていたが、リュウマチに対するTNF抗体のような決定打は見つかっていない。
   今日紹介するシカゴ・Rush大学医療センターからの論文は、Cd11bを活性化するとSLEの症状を軽減できる可能性について示す論文で、Journal of Clinical Investigationオンライン版に掲載された)。タイトルは、「Cd11b activation suppresses TLR-dependent inflammation and autoimmuneity in systemic lupus erythematosus(Cd11bの活性化はSLE患者さんのTLR依存性炎症と自己免疫を抑える)」だ。
   この研究はゲノム解析から明らかになっていた、インテグリンαM分子の変異とSLEとの相関のメカニズム追及から始まっている。インテグリンαM(IGAM)は、私が現役の頃はMac1として知られていた分子で、主にマクロファージが発現している。SLEの炎症は、自然免疫に関わるTLRの活性化に続く様々な炎症性サイトカインの上昇が基盤にあるので、SLE患者さんをIGAM変異の有無で分けて、インターフェロン濃度を調べると、IGAM変異のある患者さんの多くが高い濃度を示すことを発見する。
   この発見がこの研究のハイライトで、あとはIGAMを活性化する薬剤Leukoadherin-1(LA-1)を用いて、インテグリンの活性化から炎症性サイトカイン発現までの分子経路を丹念に調べ、ITGAM活性化、Myd88機能抑制、AKT及びPIKK下流シグナルの抑制、FoxO3を介するインターフェロン発現低下、及びNFkBを介する細胞遊走低下が起こることを示している。
   最後に、MRL自己免疫モデルマウスにLA-1を投与し、抗核抗体が低下、炎症性サイトカインのテイア低下、皮膚症状の改善、腎炎の改善が見られることを示している。また、実際の患者さんの白血球を試験管で刺激する実験を行い、LA-1からFoxO3を介する経路が確かに動いていること、またIGAMの変異にかかわらず、LA-1がFoxO3活性化を抑制できる可能性を示している。
   LA-1をそのまま患者さんに使えるかどうかは疑問だが、IGAMからの経路が明らかになることで、SLEを治療できる新しい薬剤開発への期待が膨らむ。

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