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3月26日:慢性骨髄性白血病の根治を目指して(Natureオンライン版掲載論文)

2017年3月26日
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   これまで最も成功したガンの分子標的薬は慢性骨髄性白血病の発がんドライバーBcl-Ablキメラタンパク質の活性を抑えるイマチニブ(グリベック)だろう。3月9日号のThe New England Journal of Medicineに11年にわたるイマチニブの治療成績が発表された(Hochhaus et al, NEJM, 376, 917, 2017)。この論文によると、10年目で83%の患者さんが生存しており、長期間イマチニブを服用しても重篤な副作用は見られないという画期的な結果だ。
   とはいえ、まだ2割の人がこの治療では救われないこともわかる。イマチニブに対する耐性を持つ白血病細胞が発生するからだ。これに対し、イマチニブとは異なる部位に結合して、キナーゼ活性化に必要な構造変化を抑制するための薬剤開発が試みられている。
   今日紹介するボストンにあるノバルティス社の研究所からの論文はAble分子のミリスチン酸結合部位に結合してAblの機能を阻害する薬剤開発についての論文でNature オンライン版に掲載された。タイトルは「The allosteric inhibitor ABL001 enables dual targeting of bcr-abl1(アロステリック阻害剤ABL001はBcr-Abl1のダブル標的治療を可能にする)」だ。
   この研究も最近流行りの、標的部位に結合する小さな化合物をリストし、その結合状態を構造的に調べて、結合した幾つかの化合物を合わせて一つの化合物に融合させる方法を用いている。この方法でAbl分子のミリスチン酸結合を阻害するABL001と名付けた化合物を開発する。
   あとはこの化合物が実際にBcr-Abl分子でガン化した細胞増殖を抑制するか白血病細胞株パネルを用いて調べ、Bcr-Ablがドライバーになっている全ての白血病細胞の増殖を抑制することを確認している。
   次にAbl001に対する耐性細胞の出現をニロチニブ(キナーゼ阻害剤)に対する耐性細胞と比較する実験から、それぞれの薬剤に対する耐性細胞は全く独立に出現することを明らかにしている。これが正しければ、Abl001とイマチニブを同時に投与することで、それぞれの薬剤に耐性の細胞が存在しても、どちらかで補って死滅させることができると期待される。
   そこで白血病細胞を移植したマウスに、ニロチニブとABL001を同時に投与する実験を行い、期待通り完全に抑制し、途中で薬剤投与を中止しても100日以上再発がないことを確認している。
   最後に様々なキナーゼ阻害剤に耐性を獲得した患者さんに第1相の治験としてABl001を投与しているが、何ヶ月かは白血病を抑制することが可能であることを示している。ただ、Abl001単剤ではやはり耐性が出現することも明らかになった。
   残念ながら話はここで終わっているが、今後最初からイマチニブとABL001を同時に投与する治験が行われると思う。マウスで得られた結果が確認されれば、慢性骨髄性白血病の根治に向かって第一歩になると期待している。   しかし最近、製薬会社の第1相研究がNatureによく掲載されるのにも驚いている。

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