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4月2日:ビタミンCによるガン治療(4月10日号Cancer Cell掲載論文)

2017年4月2日
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    ビタミンCはその強い還元能力で体の活性酸素を抑えて、細胞を守ることで、老化を防止し、美容やがんの発生に役にたつと思っている人は多い。いかがわしいトクホが横行する中で、ビタミンC飲料は間違いなく効果が確かめられた飲料と言っていいだろう。中でも、風邪に効果があると思っている人は多いはずだ。先週Nutrientという雑誌に発表されたフィンランドのHemilaという研究者の総説によると、1日6−8gという大量のビタミンCを服用すれば確かに症状の出る期間を短縮できることはまちがいないようなので、風邪にかかったら安心して、しかし大量に飲めばいい。
   ただ、もしビタミンCが細胞を酸化ストレスから守ってくれているなら、同じようにガン細胞もビタミンCに守られることになる。しかしガンの放射線や化学療法を補助する意味でビタミンCの点滴を行っているグループがあるが、これはガンを助けてしまわないのかと心配になる。
   これに対し今日紹介するアイオワ大学のグループは、モデル実験と実際の治験を組み合わせた研究を行い、大量のビタミンC投与ががん細胞を選択的に叩くことを明らかにし、4月10日発行予定のCancer Cellに発表した。タイトルは「O2・- and H2O2-mediated disruption of fe metabolism causes the differential susceptibility of NSCLC and GBM cells to pharmacological ascorbate(スーパーオキシドアニオンラジカルや過酸化水素を介する鉄代謝の崩壊がビタミンCに対する非小細胞性肺がんとやグリオブラストーマ細胞の感受性を特異的にあげる)」だ。
   この研究では肺がん細胞(NSCLC)やグリオブラストーマ(GBM)細胞をビタミンCと培養すると、正常細胞と比べがん細胞の細胞死が強く誘導されること、またマウスに人ガンを移植してシスプラチンと放射線で治療するときビタミンCを投与するとマウスの生存に高い効果があるという結果を説明するため、ビタミンCのこれらの細胞の効果について生化学的に解析している。
  詳細は省くが結果を要約すると以下のようにまとめられる。
  ガンではフリーの鉄レベルが上昇しており、これがビタミンCに働いて酸化を促すことで、さらにフリーの鉄のレベルを上昇させるサイクルが動き始める。こうして上昇を続けるフリー鉄と過酸化水素が反応すると、ハイドロオキシラジカルの産生が上昇し、細胞の複製など様々な過程を障害するというシナリオだ。
   この効果は、ガンでもともと活性酸素やフリー鉄のレベルが上がっているために得られる効果で、この場合はビタミンCが活性酸素を抑えるどころか、逆にそのレベルをあげていることになる。一方、正常細胞ではフリーな鉄のレベルが低いため、細胞障害性はでないことになる。確かにガンに特異的に効果があることを納得した。
   このようにメカニズムを確認した上で、この研究では少人数のガン患者さんに大量のビタミンC投与治験を行い、高い効果が得られることを示している。基礎と臨床を橋渡しした力作だと思う。
   最後に付け加えておくと、ビタミンCは全て点滴で投与しており、なんと60g以上投与する必要がある。とはいえあまり強い副作用は出ないようなので、ぜひもっと多くの患者さんを使った治験が早く進むことを期待する。
  1. H.Ando より:

    「高濃度ビタミン療法」は、米国ではよく知られ専門医もいるのに、日本では取り上げられない状況です。東大には、メカニズムの研究者もいます。ご関心があれば、ご連絡ください。

    1. nishikawa より:

      コメントありがとうございます。問い合わせがあれば、そちらに回します。

  2. TK より:

    いつも勉強させていただいております。
    ご存知かもしれませんが,Scienceに報告された以下の論文も臨床研究はないですが,メカニズムについてよくやられています。
    Science. 2015 Dec 11;350(6266):1391-6. doi: 10.1126/science.aaa5004.
    ビタミンC点滴についてはかなり複雑な経緯があるようですね。身内が癌になった際にビタミンC点滴について医者に相談した際に「おしっこで出ちゃうでしょ」とかなりバカにしたように鼻であしらわれました。やっと見つけたクリニックでは,安全性を無視していきなり高濃度投与しようとしました。Riordan Clinicのプロトコルがしっかりしているのではないかと思いますが,専門の方々から見るとどうなのでしょうか?

    1. nishikawa より:

      この論文も引用されていました。どちらも使えるなら、ぜひ進めてほしいと思います。Yahooにも掲載して、広く宣伝してみましょう。

  3. TK より:

    Yahooへの掲載も読ませていただきました。安全性が高く可能性のある治療法かと思いますので,研究が進むことを期待しております。一点,どこに伝えて良いのかわからないのでこちらで書かせていただきます。身内が糖尿病を併発する膵臓癌で,ビタミンC点滴を受けました。その際,一般的な血糖値の簡易測定機ですと,ビタミンCをグルコースと同様に検出するために,ビタミンC点滴後には見かけの血糖値(実際にはビタミンCを検出)が高くなると言われています。文献もあります。ところが,何故か身内の場合には値が下がりました(30~50mg/dl !)。毎回,そのような傾向が見られて再現性がありました。血糖値測定は,テルモ社のごく一般的なもの(患者自身が指先の血を採って測定するもの)だったと記憶しております。機器の問題なのか,あるいは報告されていない(?)現象なのかわかりませんが,安全性にも関わることですので,どなたかご専門の方に研究していただけたらと願っております。

  4. TK より:

    先の投稿で「機器の問題」と書いてしまいましたが,これですとまるでテルモ社の測定器に問題があるように読み取れてしまいますので「特性」に読み替えていただければと思います。

    1. nishikawa より:

      低血糖の危険のある方には注意が必要ですね。すでにブログに書いていますが、ビタミンCだけでなく、間質反応の強い膵臓癌はビタミンDアゴニストも効果があることが治験で確かめられ始めています。一度まとめて、ニコニコ動画で取り上げようと企画しています。

  5. K.Saito より:

    高濃度ビタミンCを癌治療に取り入れて、著しい治療効果が上がることは、30年も前に確立されています。今日までに、癌センターで見放された多数の癌転移患者、癌余命患者を救っている医師がよく使っています。米国でも20年以上も前に日本のその先生が講演をおこなって実績を紹介しています。千葉県千葉市美浜にある美浜ホームクリニックの国際がん予知予防センター、小林常雄医師です。Youtubeで名前を引けば情報が得られます。米国での今回の発表は、この小林先生の影響ではないかと思います。この先生にとって高濃度ビタミンC療法は、よく使う癌治療方法の中の一つにすぎません。膨大な治験とこの治療法を完璧に使いこなす医師は現在のところこの先生しかいないのではないかと、思うほどです。
    この先生は30年前に、癌をミリ癌の状態で把握し、血液検査の数値で癌を追跡し、適切な治療法・予防法で癌を治しています。余命を言い渡された患者には、いくつもの治療方法が確立されています。他の病院で見放された癌患者にも『癌は自分で作った病気だから、自分で治して帰りなさい。』というスタンスです。自分で治す手伝いをしてくれる、お医者さんといっていいと思います。癌で困っていらっしゃる方にとって、最後の希望の星です。癌は治る病気だと言ってます。
    困っていらっしゃる方の参考になればと思い、情報を入れました。

    1. nishikawa より:

      科学的なデータを重ねることが重要で、一つに決めてしまうのは問題だと思っています。

  6. 関元子 より:

    彼が非小細胞肺癌、扁平上皮癌ステージⅢです。手術はできないので、ずっと放射線と、点滴と投薬でしたが、体力も落ちてきたので放射線もやってない状態です。数日前に肺炎を併発。食欲もない時が多く、体力もないです。3ヶ月間、東京国立がんセンターに入院してますが肺炎を併発したので、来週転院しましょうと言われたそうです。色々調べてはみたのですが、高濃度ビタミンC点滴が良いと聞きました。副作用とか心配ですが良いと思いますか?

    1. nishikawa より:

      やってみる価値はあるように思っています。大量投与ですので、医師が論文を見てやってくれるかどうかにかかるでしょう。

  7. Miyu.F より:

    はじめまして。
    突然のコメント、失礼します。
    母が間質性肺炎の経過観察中に、肺癌を併発。
    82歳と高齢であること、間質性肺炎を憎悪させる可能性のあることから、標準治療は出来ないといわれました。現在は癌による身体的症状もなく、通常の生活をしておりますが、治療法が無いといわれ途方にくれております。高濃度ビタミン療法、免疫療法など、どう思われますか?

    1. nishikawa より:

      82歳はまだまだお若いでしょう。肺がんの場合、オプジーボは適応になるのではないでしょうか。高ビタミンは何グラムも点滴に入れるので、それに興味を持つ医師がいないと治療を受けられないと思います。患者さんの希望に合わせて、エビデンスのある治療法をやってもらえる診療所を作っていただけるよう、呼びかけています。

  8. hori より:

    ビタミンCとは、ガンにきくんでしょうか?
    白血病にきく、食材は、なんでしょうか?
    とにかく、ガンになりたくないので、がん予防なども、できるならお願いします❗

  9. Okazaki Yoshihisa より:

    ビタミンC療法:皆さん関心が高いようですね。

    ガンではフリーの鉄レベルが上昇
    ビタミンCに働いて酸化を促す
    さらにフリーの鉄のレベルを上昇させる

    こうして上昇を続けるフリー鉄と過酸化水素が反応すると、ハイドロオキシラジカルの産生が上昇

    がん細胞の複製など様々な過程を障害

  10. 吉田 より:

    はじめまして 82歳の母が大腸がんが肺へ転移し昨日から  抗がん剤の標準治療をはじめました。元気で本当に転移があるとは思えませんが CTで確認されています。抗がん剤は免疫力を落としてしまうので 抗がん剤を止めてビタミンC療法に変えたほうが良いのでは?と思ったりしていますが どうなのでしょうか?高濃度ビタミンC療法も副作用があるかもしれないし 82歳 まだまだ元気ですが抗がん剤は 体にかなりのダメージがあるものなのでしょうか?アドバイスいただきたいと思います。

    1. nishikawa より:

      薬剤によります。標準治療とすると、何クールか過ぎるとかなりダメージはあると思います。最近では遺伝子を調べて副作用のない治療をおこなうための遺伝子診断が日本でも行われています。最も重要なのは、一度このオンコパネル検査を受けてもらうことではないかと思います。もちろん標準治療以外の最適の治療が見つからない場合も多いですが、何も知らずにやるよりいいのではと思います。ビタミンC療法は大量のビタミンCの点滴ですので、積極的に進めるクリニックは多くないと思います。また、根治ではなく、生存期間を延ばす働きがあるだけであることも理解してください。

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