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4月19日:新しい神経薬理学的方法の開発(4月7日号Science掲載論文)

2017年4月19日
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    チャンネルロドプシンを用いて、光で目的の神経を興奮させる方法が開発され、動物の特定の神経を、生きたま刺激したり抑制したりすることが可能になり、神経生理学や行動科学は大きく進展した。21世紀初頭のビッグイノベーションを3つ挙げろと言われたら、iPS, CRISPR,そしてoptogeneticsが私の答えになる。重要なことは、optogeneticsがオリジナルな方法を超えて様々な新しい方法を生み出している点だ。すなわち、研究者の想像力の連鎖を引き起こす点だ。
   今日紹介するデューク大学からの論文は特定の細胞のシナプスにまず薬理活性のある物質を貯めたあとで、光でその物質を遊離させ、特定の神経を刺激する方法の開発で4月7日号のScienceに掲載された。タイトルは「Deconstructing behavioral neuropharmacology with cellular specificity(神経行動薬理学を細胞特異的に脱構築する)」だ。
   特定の神経だけを刺激する方法は現在数多くあるが、そのほとんどは刺激したい細胞本来の薬理学的特性を無視して刺激が行われる。一方、長年の薬理学的研究により特定の分子を刺激したり抑制したりする薬理物質のレパートリーは膨大なものがあり、この薬理学的手法をもちいて、もっと生理学的に特定の神経を刺激できると新しい分野が開けると予想できる。
   この課題をdrugs acutely restricted by tethering(DART)と彼らが呼ぶ方法で実現したのがこの研究で、実際にはHaloTagと呼ばれる小さな化合物に結合するバクテリア由来の分子を目的のシナプスに発現させたあと、HaloTagとスペーサーを介して結合した薬理活性物質を低い濃度で投与すると、細胞は刺激されないが薬理活性物質をHaloTag結合タンパクを介してシナプス膜上に貯めることができる。こうして特定のシナプス膜上に溜め込んだHaloTag-薬理活性物質に光を当てると、HaloTagが切れて、薬理活性物質によるシナプスの刺激が起こるというアイデアだ。
   脳のスライス培養を用いて特異性や、スペーサーの長さなどを至適にした後、この方法を線条体に存在する興奮性のD1ドーパミン受容体陽性細胞(D1細胞)と、抑制性のD2ドーパミン受容体陽性細胞(D2細胞)の機能を明らかにするために使っている。というのも、両者とも同じAMPA型グルタミン酸受容体を発現しているため、グルタミン酸刺激の効果を区別して解析することは難しかった。ただ、この問題を解決しない限り、ドーパミン刺激が低下したパーキンソン病患者さんの運動障害を解析し、運動能力を高める新しいリガンドの開発などは難しい。
   この研究では、黒質細胞を除去したパーキンソンモデルを用いて、AMPA型受容体抑制剤が運動機能を改善する効果のほとんどがD2細胞を介していることを明らかにしている。
   最後にD2細胞を詳しく分けて、ほんの一部しか存在しないコリン作動性の集団も細胞数は少ないものの抑制により運動機能が促進できることを示している。今後このポピュレーションを標的とした薬剤が開発できればパーキンソン病の患者さんも助かるだろう。   この研究では他の薬理活性物質も同じように使えることを証明しているが、紹介はいいだろう。著者らが期待した通りの効果が得られたという結果だ。読んでみると、今のままではこの方法が爆発的に他の方法に変わるのは難しいように感じる。しかし、今後脳内への投与ではなく、全身投与でリガンドが脳に到達し、リガンドを切り離す他の方法が開発できれば、これまでの薬理学の蓄積をすべて味方につけて、この方法はブレークするように感じた。
   我が国でも光遺伝学や遺伝子編集に大きなお金が投資されているらしいが、世界に伍していくための本当の戦略があるのか、これほど世界の進歩が激しいと、その成果は厳しく問われると思う。私も注視していきたい。

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