オープンアクセスなので誰でも見ることができる。論文を開いて少しスクロールすると、皆さんは驚くべき光景を目にする。なんと7匹のヤギが高い木の枝の上に立っているではないか。この写真を見れば「何事が起こっているのか?」読み進むはずだ。
少なくとも私はヤギが木に登るなど考えたこともなかったし、また見たこともなかった。しかし、緑の少ないモロッコの平原では、なんとほとんどのヤギが木に登って葉や木の実を食べるのが当たり前のようで、食事の74%は木の上で葉を漁っているようだ。ニホンカモシカが岩場をスイスイと歩くのを見れば、確かに木に登れてもおかしくない。また、メキシコやスペインでも低い木にヤギが登っているのは目撃されるようだ。しかし、8−10mもある高い木に登るのはアフリカだけのことらしい。
この写真で一つ物知りにはなったが、この論文で「木登りヤギ」は読者の気を引くためだけに使われ、結局「ヤギが登っているアルガンノキの実がもっている大きな硬い種はヤギによってどう処理されるのか?」がこの研究の主題になる。
観察から、硬い種は便と一緒に排出されるのではなく、反芻中に口から吐き出されるという可能性を着想する。そこで、スペインで家畜として買われているヤギに様々な大きさの種を持つ果実を食べさせ、アルガンノキのような大きな種は30−45%が口から吐き出されること、また吐き出された種の7割がまだ生きていることを示している。
これらの結果から、放牧型のヤギをもっと積極的に活用すれば、アルガンノキのような有用植物の繁殖に活用できることを示している。
結局木に登るヤギで目を引きつけた後は、一転他のヤギで話を進めており、結論を読んでそれに気づくという、羊頭狗肉(この羊はヤギと読んでほしい)の典型論文だが、ヤギが高い木に登ることと、反芻中に種だけ吐き出すことを知って、ちょっと物知りにはなった。