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6月14日:CDK4とCDK6の違い:細胞周期による代謝リプログラムを標的としたガン治療(Natureオンライン版掲載論文)

2017年6月14日
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DNA合成開始から、細胞分裂まで、正確なタイミングで細胞増殖が続くためには、細胞周期の各段階に特異的に働くサイクリンとサイクリン依存性キナーゼが必要だ。この中でDNA合成へと移行するG1期を調節しているのがcyclin D1−3とcdk4とcdk6だが、Rb1のリン酸化部位が異なることはわかっていても、cdk4とcdk6の間の機能的区別については明確でなかった。実際、細胞周期を標的に開発された阻害剤はcdk4/cdk6阻害剤とひとまとめにされている。
   今日紹介するボストン・ダナファーバーガン研究所からの論文はcdk6には代謝を調節する別の機能が存在し、これを標的にすることで既存のcdk4/cdk6阻害剤をより効果的に使えることを示した研究でNatureオンライン版に掲載された。タイトルは「The metabolic function of cyclin D3-CDK6 kinase in cancer cell survival (cyclinD3-cdk6はがん細胞の代謝を調節して細胞の生存に関わる)」だ。
   G1サイクリンはガンで発現が高く、cdk4/cdk6の阻害剤はガン治療の目的で開発されているが、これらのキナーゼの標的になっているRb1が欠損したガンでは効果がなくなる。ところが、T細胞白血病(T—ALL)ではcdk4/cdk6阻害剤によりなぜか細胞死が誘導されることが知られていた。
   この研究ではRb1を欠損して理論的にはcdk4/cdk6阻害剤の効果がないはずのT-ALLでもcdk4/cdk6阻害剤が細胞死を誘導するという発見から、cyclinD3とT細胞で発現の高いcdk6が、細胞周期とは異なる経路の制御を行っているのではと着想し、T-ALL細胞からcdck6結合タンパク質を精製したところ、なんと糖分解系に関わるフルクトースキナーゼ1(PFK1)とピルビン酸キナーゼ M2(PKM2)がcyclinD3/cdk6によりリン酸化され、酵素活性が低下することを発見する。
   この発見により、cyclinD3/cdk6を高発現するがん細胞では、サイクリンにより細胞周期が促進するだけでなく、早い増殖についていけるようにPFK1、PKM2の2種類の酵素活性を抑え、ブドウ糖がペントースフォスフェートと、セリン経路を介してNADPHとグルタチオン合成に利用できるようリプログラムすることで活性酸素を抑え、細胞死を防いでいることが明らかになった。したがって、cyclinD3/cdk6発現の高いガンにcdk4/cdk6阻害剤を使うと、細胞周期を停止するだけでなく、細胞死も同時に誘導することになるため、治療効果が高まるという結論だ。
   この可能性が、T-ALLだけでなく、他のガンにも当てはまることをメラノーマについても確認している。
   この研究はcyclinD3/cdk6が代謝のリプログラムを誘導するという、比較的当たり前の話だが、ガンの治療という点では、かなり重要な発見ではないかと思う。すでに治験が進んでいる薬剤がいくつか存在するので、ぜひガンに合わせて薬剤が使える体制が出来上がって欲しいと思っている。

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