今日紹介するオーストラリア クイーンズランド大学からの論文は、最新の技術を駆使してジャワからのルートに当たる北オーストラリアMadjedbebeで発掘された石器と、生活の跡の年代測定から、この上陸がこれまで考えられてきたよりかなり早い65000年前後になることを示した研究でNatureオンライン版に掲載された。タイトルは「Human occupation of northern Australia by 65000years ago(北オーストラリアの人類による占拠は65000年前までにおこった)」だ。
この研究は3層にわたって違う時代の石器が出土するMadjedbebeの発掘研究で、最も下層、すなわち最も古い層から発見された石器、火により調理された炭化物の年代解析を炭素アイソトープ法、最後に太陽光が当たった時期を測定するOSL法などを組み合わせて行っている。
結果だが、層が深くなるといずれの方法でも年代が古くなり、最終的に最も深い第3層は、65000年前に始まり、57000年に終わった生活あとであることが計算されている。この結果は、これまで考えられていた1万年以上前に、オーストラリアへの人類上陸が進んでいたことを物語っている。
以前紹介したようにアボリジニのゲノム研究から、アボリジニ系統が他の現代人よりかなり早く分離していることが分かっており(http://aasj.jp/news/watch/5824)、このグループだけがネアンデルタール、デニソーワと交雑しながら、かなり早い時期にオーストラリアへ移動してきた可能性をこの研究結果も支持している。
これは私の勘ぐりかもしれないが、この研究では石器の評価についてはほとんど何も語っていないのが気になる。かなり進んだ石器群で、矢じりが含まれる点などおそらくネアンデルタールのムスティエ文化より進んでいるのだろうと推察するが、これを当たり前のこととして扱っているのか、あえて明言を避けているのか、不思議に感じる。特に、modern humanの遺跡であることも明言していない。オーストラリア大陸にはエレクトゥスも、ネアンデルタールも出土していないため、humanと書けばmodern humanかと思うが、わざわざhumanだけにしているのは、著者らがもっと面白いロマンを頭に描いているのかもしれない。出アフリカでも議論が高まっているときだけに目が離せない人類最果ての地だ。