乳がん検診に関するコーネル大学からの論文:Cancer(in press:DOI: 10.1002/cncr.30842)
現在米国では、1)40歳以降、84歳まで毎年マンモグラフィー検査、2)45歳以降54歳まで毎年マンモグラフィー、55歳からは2年ごとのマンモグラフィー、3)50歳以降2年ごとのマンモグラフィー、の3種類の乳がん検診プロトコルの大規模治験が進んでいる。それぞれのプロトコルでどの程度死亡率が減ったかを検証し、40歳から毎年マンモグラフィーを行うと、40%死亡率を減らせるが、2)の場合は30%、3)の場合は23%だったことが報告されている。一方、検査のしすぎで余分なバイオプシーなどの検査が行われる確率については、それぞれであまり差がない。したがって、乳がんに対しては、早くからマンモグラフィー(他の方法でもいいはず)を毎年受けた法がいいことになる。
パーキンソン病に対する抗糖尿病薬の効果を示したロンドン大学からの論文(The Lancet in press:doi.org/10.1016/S0140-6736(17)31585-4)
インシュリン分泌を促すグルカゴン様の作用を持つペプチド、GLP-1は2型糖尿病の薬として利用されている。最近の研究でGLP-1が脳に入って神経を保護する効果があることがわかっていた。この研究では62人のパーキンソン病患者さんを無作為化してGLP-1と偽薬を投与、60週目でドーパミンを切った時の運動機能を調べている。専門家でないので、効果がどの程度のものかはっきりと言えないが、グラフで見る限り偽薬群は投与前より悪化しているのに、GLP-1群は改善している。かなり有望ではないだろうか。まだまだメカニズムも分かっていないのがこの点が明らかになれば、新しい方向性の治療として期待できるのではないだろうか。
低容量アスピリンの妊娠中毒症防止効果についての英国キングズカレッジからの論文(8月17日号The New England Journal of Medicine掲載論文)
アスピリンを定期的に服用している妊婦さんでは妊娠中毒症が少ないことが報告されたのは1979年だが、その後多くの小規模治験が行われてきた。この研究では、これまでの研究の集大成として26000人の妊婦さんの中から妊娠中毒症の危険が高い2971人を選び、妊娠11週から34週までアスピリン150mg、或いは偽薬を投与(この量は薬局で売っている量(330mg)より少ないことに注意)、経過中の妊娠中毒症の発症頻度を調べている。結果は期待通りで、アスピリン群では発症率が1.6%、偽薬群では4.3%で、高い効果が示された。少なくとも中毒症の発症可能性が高いケースではアスピリンの服用が推奨できるのではないだろうか。
死体からのペニス移植についての南アフリカStellenbosch大学からの論文(8月17日号The Lancet掲載論文)
南アフリカ、ケープタウンといえばバーナード博士の世界最初の心臓移植が行われた町だが、今日紹介するのは、小児期に民間の包茎手術による感染でペニスを失った黒人に死体からペニスを移植した一例報告だ。詳細は全て省くが、9時間かかる大手術で移植は成功し、2年後の検査では排尿機能だけでなく、勃起など性的機能も改善し、自覚的にも満足することができているという結果だ。もちろん他の原因でペニスを失うこともあるので、我が国の泌尿器科でも今後行われるのではと予想する。