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9月11日:バクテリアと襟鞭毛虫の驚くべき共存関係:コンドロイチンの起源(9月7日号Cell掲載論文)

2017年9月11日
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真核生物にしかないとされている細胞骨格、クロマチン構造に関わるヒストンなどの分子、エピジェネティックメカニズムなどは、詳しく調べれば細菌や古細菌に存在することがゲノム研究から明らかになっている。最近、このようなプロトタイプ分子の機能についての研究が進み、系統的に大きく離れた生物間であっても、機能の連続性という観点から進化を見ることが可能になってきた。この結果、単細胞動物の研究が新しい領域に入ってきたような気がしている。

今日紹介するカリフォルニア大学バークレー校とハーバード大学の共同論文は、バクテリアと真核生物の思いもかけない共存関係を示した研究で9月7日号のCellに掲載された。タイトルは「Mating in the closest living relatives of animals is induced by a bacterial chondroitinase(動物に最も近い生物の接合はバクテリア由来のコンドロイチン分解酵素により誘導される)」だ。

おそらくタイトルだけではどんな論文かよくわからないと思う人は多いはずだ。この研究では多細胞動物に系統的に最も近く、細胞同士が集まって群れを作り、接合する単細胞生物、襟鞭毛虫が研究対象だ。この襟鞭毛虫にイカと共生して発光に関わるビブリオ・フィッシェリ(VF)を加えると、まばらに孤立して存在している襟鞭毛虫が急速に集合し、群れることを発見している。

次に集合によって何が起こるか調べ、襟鞭毛虫同士が接合し、遺伝子組み換えが進むことを発見する。すなわち、VFのおかげでバラバラの襟鞭毛虫は集まって、接合、遺伝子の組み替えが誘導される。

次にVFが接合を誘導するメカニズムを調べ、コンドロイチン硫酸を分解する酵素活性があり、この活性により接合が起こること、そして襟鞭毛虫側でその基質となるコンドロイチンが合成されることを示している。

話はこれだけだが、まず多細胞生物に系統的に近いとはいえ、単細胞生物にすでに細胞マトリックスとして動物内で働くと多糖体コンドロイチンを合成するすべての酵素が存在し、コンドロイチンを分泌していることから、コンドロイチンやヒアルロン酸のようなマトリックスの起源が単細胞から存在することがわかる。さらに驚きは、このマトリックスを変化させ集合・接合が誘導される引き金をバクテリアが引くことだ。

もちろんなぜこのような共生関係が成立したのか、またバクテリアにとって襟鞭毛虫の接合を誘導することにどのようなメリットがあるのか、この研究だけからはわからない。しかし、この系にプロテオグリカン系の細胞外マトリックスの進化を知るための重要なヒントがあることは確かだ。次の展開が楽しみな論文だった。

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