今日紹介するデンマーク・コペンハーゲン大学からの論文は細菌叢の構成を調べて解釈に苦労するのではなく、簡単な指標を探すための研究の一つでInternational Journal of Obesityオンライン版に掲載された。タイトルは「Pre-treatment microbial prevotella to bacteriocides ratio determines body fat loss success during a 6 month randomized controlled diet intervention(細菌叢のPrevotella vs Bacterioides 比は6ヶ月のダイエット食の効果を調べる無作為化試験の結果を予測できる)」だ。
この研究は、発想も実験も実に単純で、何千もの細菌叢を分析して結局泥沼に陥ることを避けている。まずこれまでの研究で、肉食に偏るとBacterioides系統が増え、炭水化物と繊維の多い食事を取っている人はPrevotella系統が多いことがわかっている。そこで、他の細菌系統は全部無視して、この両者の比(P/B比)を指標に、高い植物繊維型と低い脂肪型にわけ、その上で、繊維を増やしたダイエット食の効果がどちらに見られるか調べている。
方法は全細菌を調べるのではなく、系統特異的なプライマーを使ってPrevotellaとBacterioidesの相対量を調べ、その比が0.01より高いと植物繊維型、多いと脂肪型に分けている。もともとPrevotellaの比率は極めて低く、今回も全く存在しなかった人もいたようで、その人たちは除外している。それぞれのグループで、無作為化してデンマークの通常食、及び繊維の多いダイエット食を半年続けてもらって、6ヶ月後の体重と体脂肪を計測している。
さて結果だが、植物繊維型の細菌叢を持っていた人は、ダイエット食の効果が3.4Kgだったが、脂肪型の細菌叢を持っていた人では1.1Kgで止まっている。さらに、ダイエットをやめてからさらに6ヶ月経った後の体重を調べると、植物繊維型の人はそのまま体重が維持できたのに、脂肪型の人は元に戻ったという結果だ。
実際にはよくデータをみるともう少し複雑だが、著者らの結論をとりあえず鵜呑みにしておこう。この結果が正しいかどうかは、今後さらに多くの人で検証されるだろう。ただ、全細菌の構成を調べて泥沼に陥るのではなく、もっと簡単な指標が開発されれば、簡単に細菌叢の検査が使えるようになる。それを示せたいい例だと思う。