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12月6日朝日新聞記事(福島)細胞内で異物につく分子、東北大・東京医科歯科大が発見。

2013年12月7日
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朝日新聞の福島さんが東北大学のオートファジーに関する研究を紹介した。(http://www.asahi.com/articles/TKY201312040406.html)論文はMolecular Cell誌に掲載され、タイトルは「Endogenous Nitrated Nucleotide is a key mediator of autophagy and innate defence against bacteria(細胞内のニトロ化核酸はオートファジーと細菌に対する自然防御に必須の役割を持つ)」だ。しかし、「細胞内で異物につく分子・・・発見」と言う見出しを見た時、一般の人はどう感じるのだろう。私は見出しを見た時何を言っているのか全くわからなかった(勿論記事を読んで納得したが)。多分中途半端にものを知っていると、コミュニケーションが図れないのかもしれない。
   さて論文を読んでみるとこの仕事が、A型連鎖球菌が貪食細胞に食べられた後どう処理されるのかを丹念に調べた仕事だとわかる。一つ一つの分子の詳細は全て省くが、まず細菌成分による刺激でNO(一酸化窒素)が発生し、次にこれに反応してニトロ化cGMPが作られる。次にこの分子が細菌上の蛋白質を直接変化させることで、細菌はオートファジーが起こる様印がつき、オートファジーが進んで小器官に閉じ込められた後、分解されると言う一連の過程を解明している。この研究の売りは、NO発生によりニトロ化cAMPが作られ、これが細菌の蛋白を変化させることで、オートファジー経路に導かれると言うメカニズムの発見だ。はっきり言って、派手さのない極めて専門的な仕事で、一般の人にはわかりにくく福島さんも記事にするのに苦労したと思う。勿論、記事の最後にまとめられているメカニズムについてはうまく書けている。しかし、なぜこの論文を記事に選んだのか勿論私にはわからないが、おそらくオートファジーについての研究と言う事が理由ではないだろうかと推察する。オートファジーは、現東工大の大隅さんが酵母の電顕の観察から着想を得てライフワークとして進められた独創的な研究で、分子メカニズムが大隅さん達によって明らかになり、今では細胞内での不用な分子を処理する重要な機構である事が世界に認められている。即ち、我が国発のオリジナルな仕事だ。細胞内にはもう一つ不必要な分子を処理する機構がある。ユビキチン化と蛋白質分解による処理だが、この機構の発見には既にノーベル賞が与えられている。このため、大隅さんは今年のノーベル賞の有力候補だと言う記事が多くの新聞をにぎわせた。おそらく今回の記事も、この事が頭にあるのではないだろうか。それなら、日本の誇る大隅さんも含めて紹介すればもう少しわかりやすかった様な気がする。研究は歴史的に見てみると一般の人にもわかりやすい。特に日本オリジナルな重要な概念については、歴史についても紹介して欲しいと思う。ともかく、「どこかの誰かが、よくわからないけど重要な事をしたようだ」と言った記事はいただけない。

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